黒雪姫「ハルというのは君の名か?」ハルヒロ「え?」
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12:名無しNIPPER[sage saga]
2021/11/20(土) 19:41:54.32 ID:VlyNWS6QO
エピローグ

「メリイ……その、さっきのこと」
「うん……」

元の世界に帰ってきたハルヒロは真っ先にズボンに空いた穴を塞がなければならなかった。しかしハルヒロに手芸のスキルはない。
だからメリイが繕ってくれた。取り繕った。

「なんか、嫌な思いさせたって言うか……」
「そんなことない」

申し訳ない気持ちを伝えると、メリイはきっぱりそう言った。意外と強い口調で、まるで怒っているようだった。怒って、ないよね?

「あのさ、メリイ」
「何?」
「俺、頼りないけど、一応リーダーだし、仲間が大切だからいざって時にはなんでもするって言うか……だから、わかって欲しくて」

大便について弁明すると余計にみっともなくて死にたくなった。メリイは何も言わずに黙々と裁縫して、ズボンの穴は完全に塞がった。

「はい、出来上がり」
「ありがとう……大事に穿くよ」

お礼を言って受け取るも、離してくれない。

「メリイ……?」
「仲間のためになんでもするってほんと?」
「ほんとだけど……それがどうかした?」

何故そんな当たり前のことを訊くのだろう。

「じゃあ、あの黒い剣の人に自分の子になれって言われたら、そうするつもりだった?」
「それは……まあ、それしかないなら」

素直に答えると、メリイはハルヒロを睨み。

「ゆらゆらするハルは嫌い」
「な、なんだよ、それ」
「もうなんでもするは禁止」

やっぱりメリイは怒っていた。だからつい。

「な、なんでもするから許して」
「もう、言ったそばから」
「ご、ごめん」

お約束のやり取りをして、メリイは微笑み。

「じゃあ、また見せてね」
「え?」

何をとは言わなかった。でも顔が赤かった。
あんな物をまた見たいなんて変わっている。
でもたぶん、ハルヒロが目撃した立場ならまた見たいと思うだろう。だから理解出来る。

「ハル……帰ってきてくれて、ありがとう」
「こちらこそ」

メリイと、仲間たちが誰一人欠けることなく帰還出来たのがハルヒロの名前と一本糞のおかげならば、リーダーとして冥利に尽きた。
肌寒い風。風景の色彩。五感から伝わった。

糞みたいな世界でも、帰ってこれて嬉しい。


【灰と幻想のアクセル・ワールド】


FIN


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