藤原肇「千夜さん、一緒に釣りに行きませんか?」
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44:名無しNIPPER
2021/10/30(土) 14:50:50.70 ID:/ZuqsV3u0
 ――?
 その言い方だと、違うのか?

 ただ、と言い置いて、彼女は言葉を続ける。

「釣りは釣りで、何というか……時間を楽しむものですね」


「時間を……楽しむ?」

 今度は私が首を傾げる番だった。
 一方で肇さんは、「はい」と短く、しかと答えた。


「幼い頃から慣れ親しんだ趣味だから、抵抗が無いのかも知れませんが」

 そう前置きをしながらも、肇さんの目は晴れ晴れとして迷いが無い。
 時折、祖父方譲りの頑固者だと彼女は自嘲じみて語るが、柔らかいだけではない芯の強さを感じさせる眼差しだ。

「普段の私は、何かと忙しくして、時間に追われる日々を過ごしています。
 アイドルになってからは、なおさらそう……だから、その分」

 彼女は私を誘うように、再び頭上を見上げた。
 倣って顔を上げると、鬱蒼と生い茂る林の木漏れ日の先に、バス停から降りた時の真っ青な空がキラキラと広がっている。


「こうしてボーッとする事に時間を費やす事は、何となく贅沢なことをしている気がして、楽しいです」



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