8: ◆QlCglYLW8I[saga]
2021/09/20(月) 23:46:12.87 ID:7siPWhRxO
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「で、私を呼び出したってわけ?」
ニヤニヤしながら由梨花が僕を見る。僕はバツが悪くなって、フラペチーノのクリームを口にした。
「……悪いかよ」
「いやあ、可愛いなあと思ってさ。前にも急に呼び出したことあったじゃん。あれもそうなの?」
僕は無言で、もう一度スプーンでフラペチーノをすくう。由梨花の笑みが深くなった。
「ニャハハ、そうなんだあ。てっきり私としたかったからだと思ってたよ。あの時の真人、随分お姉さんに甘えてきてたからさ」
「こういう時だけ歳上ぶるなよ」
「でもそういうの、嫌いじゃないよ?俊太郎、母性本能くすぐるタイプだもんねえ」
「……褒められてるのか貶されてるのか分からん」
「勿論、褒めてるよお。私の友達でも、俊太郎可愛いって言う娘結構いるもん。大学でも、狙ってる娘いるかもよ?」
「生憎、大学ではとっつきにくい陰キャで通ってるんでね。第一、うちの理学部に女はほとんどいない」
由梨花が少しむくれた。
「俊太郎のそういう自己評価の低いとこは直した方がいいと思うけどなあ。てか、学歴だけなら私より上なんだし」
「たまたま入試で山が当たっただけさ。本物の天才を前にすると、思い上がろうなんて気も失せる」
「あー、前に言ってた青山って教授?でもそこのゼミ生なんだから、俊太郎も凄いと思うけど」
僕は苦笑してストローに口をつけた。
「僕からしたら、由梨花の方が凄いさ。就職、もう大体決まったんだろ?三友地所なら十分だろ」
「私こそたまたまインターンで行ったのが上手く行っただけだよ。……就職まであと1年半かあ」
ふうと溜め息をつく由梨花を見て、僕は微かな不安を覚えた。由梨花は僕より1つ上だ。僕が多分院に行くことを考えたら、社会人としてのキャリアは最低3年離れることになる。その間、この関係が維持できているのだろうか。
由梨花も同じようなことを考えているのかもしれない。あんな夢を見るのも当然か。
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