100日後に死ぬ彼女
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36: ◆QlCglYLW8I[saga]
2021/09/25(土) 22:18:11.98 ID:rdad/mqRO

そこにいたのは、小柄な男の子だった。中学生?……いや、こんな時間に中学生がいるはずがないから、多分高校生かそれ以上なんだろう。
もちろん見覚えはない。……誰だろう、この子。

「は?」

「しつこい男に絡まれて困ってるという連絡が彼女からありまして。それで来たんです」

男はハハッと笑ったかと思うと、その子の胸ぐらを掴んで凄んだ。

「……てめえは引っ込んでろよ」

「引っ込むのは、お前の方だ」

男が殴りかかろうとした、その瞬間。


ドスッ


「か……はっ……」

男が苦痛の表情を浮かべ、うずくまっている。何が起こったんだろう?

そしてその子は優結の方を見ると、呆気に取られている別の男に静かに言った。

「同じ目に遭いたいか?」

「て、てめえっ……」

男はその子に詰め寄ろうとして、足を止めた。野次馬が集まって、騒ぎになり始めている。

「こ、のガキっ……!」

「颯真、ヤバイぞっ?警察が来たら『AD』のことがバレるっ」

起き上がろうとしていた男の顔色が変わった。

「……!!チッ、引き揚げるぞ」

男はペッと唾を男の子に吐き捨て、もう一人と共に渋谷の奥へと消えていった。

あたしは優結を抱き抱える。気持ち悪そうにしているけど、特に問題はないみたいだった。

「あ、ありがとうございます。……本当に助かりました」

「たまたま通りがかっただけですよ。とりあえず、駅まで送ります。連れの人は大丈夫ですか?」

「優結、起きてる?」

「ん……ぐ……だ、大丈夫じゃない、かも……どこかで、休ませて」

優結は一人では帰れなさそうだ。どうしたものだろうと思っていたあたしに、彼は近くのビジネスホテルで一晩を明かすことを提案した。お金は彼が持つという。

「え……?そんな、悪いよ。だってあなた、まだ高校生とかじゃ……」

「あ、一応これでも大学生なんです。あと、お金は十分ありますから」

「でも、助けてもらって、ホテル代までなんて……」

「いいですって。僕がしたいだけなんです。僕は別の部屋で寝ます。終電、もうなくなりそうですし」

そもそも、彼は何者だろう?酔っていたとはいえ、男を一発で倒しちゃうんだから、空手か何かやってたんだろうけど。

「でも、何から何までしてもらって、お礼もなしなんて。ていうか、あなたは?」

彼は竹下俊太郎と名乗った。大学で勉強していたら、こんな時間になってしまったという。
たまたま近くのラーメン屋で遅い夕食を採っていたら、あたしたちを見掛けたということ、らしい。

「でも、何であたしたちを助けようなんて」

竹下君と名乗るその子は、目を丸くした。しばらく考える素振りをして、彼は苦笑した。

「……何ででしょうね。普段の僕なら、絶対にしないのに」

「そうなの?」

「何か、放っておいちゃいけない気がして」

ハハ、と彼は頭を掻いて笑った。

「とりあえず、ホテルに行ってチェックインしましょう。大丈夫、ラブホじゃないです」



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