497: ◆yOpAIxq5hk[saga]
2021/10/29(金) 22:01:18.75 ID:5KhXMOCj0
◇◇◇
教室に到着すると、望月くんは自席で文庫本のページを捲っていた。
他に生徒の姿は見られず、今日も彼は一番乗りのようだ。
「おはよう。望月くん」
「おはよう、春宮さん。昨晩はありがとう。おかげで余計なリスクを取らずに試験を終えることができた」
やっぱり彼だったらしい。
通達のタイミングとほぼ同時に期日前投票を終わらせてしまうなんて……。一緒の組になった人たちは、たった一度の会話の機会も得られずに試験が終了してしまったのだから不完全燃焼だと思う。
……あ、もしかしてリスクってそういうこと?
「君としても、雨宮さんが話さなければならない機会は潰しておきたいだろう? 話すということは、その分だけ彼女の正体がバレることに繋がるからね」
「寛大なご配慮ありがとう」
ファンとして、なのか。
その殊勝な意気込みは賞賛に値する。
なまじわたしがこの試験をほぼ放棄しているだけに、とても立派なように思えてしまう。
「この試験の結果は決まった。安心していい、僕たちの完全勝利だ」
僕たち。
おそらく東雲さんの居るAクラスも含まれているのだろう。
少なくともわたしたちCクラスが大きくクラスポイントを削がれる、という事象を避けられただけ良しとするべきか。
いや、まだ結果も出ていないから分からないけどね。もしかしたら『王様』の法則を読み違えて大敗北という結果もあり得る。
改めて文庫本へ視線を落とした彼を他所に、わたしは自席に着いた。
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