316: ◆yOpAIxq5hk[saga]
2021/09/26(日) 22:15:18.37 ID:CwWc8uazO
楽器に明るい人であれば、自作で曲を作るという話は聞いたことがある。だが、先ほどから彼女が口ずさんでいた曲はわたしにも身に覚えがある。
即ち、それが示すのは─────。
「……もしかして、天才作曲家とかそういう肩書きをお持ちですか?」
「なんで敬語? まぁいいわ。私の肩書きは、強いて言うならアイドルってやつなんじゃない?」
「アイドルっ?」
少し的外れなところを突いてしまったが、それならば彼女の持ち歌という発言に理解が及ぶ。
雨宮綾香という少女はアイドルをしている。その活動のひとつとして、先ほど口ずさんでいた曲があるのだろう。
比較的俗世間の流行に疎いわたしでも知っているような曲の持ち主である以上、かなりの有名人ということになる。
わたしは改めて彼女の顔をジッと見つめる。
切り揃えられた艶やかな黒髪。ぱっちりとした目は印象強く、鼻筋や口元にもそれらしさを感じさせる。また、綺麗でもちっとしていそうな白い柔肌は念入りに手入れがされているようだ。
「そんなに驚くこと?」
「いや驚くよ! 初めて芸能人見たんだもん!」
「そんな大したことないって。ちょっとCDが売れて、ちょっとドラマとか映画に役者で出演したことある程度だって」
「……」
空いた口が塞がらないとは、この事だろう。
常人には理解の及ばない活躍の仕方。
ちょっとドラマや映画に出演した経験があるだけでも雲の上の存在であることには変わりない。
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