290: ◆yOpAIxq5hk[saga]
2021/09/24(金) 23:43:47.80 ID:1ouIvNPrO
ゴクリ、と息を呑む音がハッキリと聞こえて来る。
「手短に済ませます。先輩、」
いよいよ交渉が始まる、というところで背後から聞き覚えのある声がわたしを呼び止める。
「お、天音ちゃん。なーにしてるの? 鈴木くんとお話? 知り合いだったの?」
振り向くと、そこには乙葉先輩が居た。
手元には鈴木先輩と同じ山菜定食。
この人はAクラスだったと記憶しているが、本当にもうプライベートポイントが空なのだろうか。そんな疑問を抱きながら、わたしは否定する。
「いえ、少しお話をと思って─────」
ふと乙葉先輩から鈴木先輩へ顔を向けると、鈴木先輩の顔には陰が出来ていた。視線が定食へと落ちている。
「わたしは外した方が良いかな?」
「いえ、構いません。乙葉先輩もご一緒に」
「わーい! 天音ちゃんは優しいねー、その調子で海老の天ぷらもくれると嬉しいんだけどなー」
「いいですよ。少し多いと思っていましたから」
「冗談だって。今わたしが出せる対価は無いからね。今晩も夏帆ちゃんのウチで美味しいもの食べさせて貰うから、今は我慢だよ我慢」
饒舌な乙葉先輩はわたしの隣に座り、山菜定食を食べ始める。それから口を開く様子は見られず、わたしと鈴木先輩の話を傍観するようだった。
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