264: ◆yOpAIxq5hk[saga]
2021/09/23(木) 10:29:14.18 ID:rlQZRnFe0
【>>261
4:気が付かない】
その日の放課後、わたしはいつも通りAクラスの前で神宮くんを待つ。
半月前は外を眺めたり携帯を触ることが彼を待つことが多かったが、ほぼ毎日こうしてAクラスの前に立てば知り合いも増えてくる。色々な運動部に顔を出していることも手伝って、顔見知りの人は日に日に増して行った。
今日も先日エレベーターで一緒になった女子生徒と5分ほど話し込み、神宮くんが来たタイミングでお別れをする。
「いつもごめんね。あんまり待つようなら先に行ってくれてもいいのに」
「ううん、気にしないで」
わたし達はBクラス、Dクラス、Cクラスの教室の前を通って生徒会室へと向かう。
会話は無い。お互いが廊下を歩き、階段を降りる音だけを響かせる。
いつもは雑談が絶えないわたしたちでも、今日ばかりはそうもいかない。それは今朝の事が原因だろう。
『Aクラスで卒業しなければ志望した就職先や進学先に進むことは出来ない。ひいてはBクラス、Cクラス、Dクラスで卒業した場合の進路の保証は無い』
その事実が判明した以上、CクラスのわたしとAクラスの神宮くんは争う立場にある。卒業のとき、どちらかが望む進路を勝ち取り、もう一方は卒業は出来ても入学前に聞かされていた進路の恩恵は受けられない。
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