259: ◆yOpAIxq5hk[saga]
2021/09/21(火) 23:55:13.01 ID:6iS857jM0
もちろん今の言葉には裏がある。
部活動をやっている人は、と前置きをした以上、放課後組に勉強会を拒否した人間が居ることは間違いない。彼なりに気を遣って遠回しに言ってくれたんだろう。
ここで変な駆け引きをしてその正体を探ることこそが無駄だ。わたしは直接聞くことにした。
「放課後組の方はそうもいかなかったんだね」
「……うん、実はね。ただそっちは僕の方でなんとかしてみるから大丈夫だよ。春宮さんは気にしないで」
「一色くんだけに任せるなんて出来ないよ。わたしもこのクラスの一員なんだから、出来ることは協力させて」
今朝の望月くんとのやり取りを引きずっているのか、ドラマのような台詞を口にしてしまった。
ただ、これは本心そのものだ。たった1ヶ月を過ごしただけでもこのクラスの雰囲気は好きな方だ。全員と仲良くなれた訳ではなくても、欠けることは避けたい。
一色くんは指の先を頬に当て、少し掻くような仕草をして対象者の名前を口にする。
「そうか、わかった。雨宮さんだよ。彼女には僕の方から何回か伝えたんだけどね。うまく取り合ってもらえなかった」
「雨宮さん……」
廊下側の真ん中の席の女子生徒だ。
わたしが春宮であるため、少し苗字が似ているなと思っていたくらいの生徒。たったの1回も話したことがないような関係性だ。というより声を聞いたことがないというレベルで人と話している姿を見たことがない。
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