245: ◆yOpAIxq5hk[saga]
2021/09/21(火) 22:03:22.62 ID:6iS857jM0
「─────ノリが良いんだね、春宮さんって。ノってくれなかったらどうしようかと思った」
「うん、でも途中のセリフ忘れちゃった。ごめんね?」
「気にしないで、僕もなんだか適当なことを口走っちゃってた気がするから。会心の出来だったよ」
そう、この一連の流れは昨晩放送されたドラマのシーンをなぞったもの。
わたしたちの入学式前日に第一話が放映された高校を舞台にしたドラマは、毎話で視聴者の期待を遥かに上をいく展開が続いて各地で話題になっている。当然、この学校の中でも話題に挙がることは多い。
望月くんが今にも雨降り出しそうな外を眺めている姿を見て、昨晩の記憶が鮮明に甦った。役者の経験は無かったが、なかなか上手くできたんじゃないだろうか。最後の方はセリフが飛んでいたけど。
「うん、まぁ、今話したのは事実だからよろしく」
気軽に言って彼は自席へと戻っていった。
確かに会話の内容はとてつもない才能を隠す男子生徒が主役のドラマと酷似している。ただ、その全てが演技というわけではない。
彼は詮索されることを嫌っているようだった。
ならわたしは詮索しないでおく。これを冗談だとは受け止めずに。彼は真面目に授業を受けてくれている。それだけで十分だ。
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