243: ◆yOpAIxq5hk[saga]
2021/09/21(火) 22:02:18.35 ID:6iS857jM0
「自らに何かを強いることは過ちだ。目標を掲げて突き進むのが人間─────って、僕のお世話になった人が日常的に言っていてね。こうして一番乗りを目標にして努力する分にはいいけど、朝5時とかに目覚ましをかけて無理やり来るのは違うんじゃないかって」
「……おぉ。なるほど。良いこと言うね、その方」
こうして望月くんと話す機会は初めてだったが、非常に興味深いことを聞けた。一理ある、どころか全面的にその意見には肯定したい。
そこでふと、彼という存在について思い出す。
望月くんといえば、四月上旬に行われた水泳の授業でどうにも本気を出していないように見えた。このクラスでも随一の運動神経を持っていそうなのに、彼は九位という結果に留まった。そのことが気になって仕方がなかったのに、すっかりと失念していた。
この機会に、遠回しに聞いてみよう。
「今日も水泳の授業あるね」
「そうだね。温水プールが完備されているとはいえ、四月から水泳の授業なんて珍しいよね。おかげで未だにグラウンドを使った授業をしていない訳だけど」
「珍しいよね。ところで、」
「ところでさ、聞いてもいいかな?」
ずっとこちらを向いていた望月くんが、ここで立ち上がった。わたしの言葉に被せてきたことも込みで、ややプレッシャーを感じる。
ところで、何を聞いてくるつもりなんだろうか。
カツ、カツと足音が近付いてくる。
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