219: ◆yOpAIxq5hk[saga]
2021/09/19(日) 18:16:59.00 ID:wv2ppvvR0
そんなギャラリーを全く気に留めることなく、彼はもう一度乾いた笑い声を発する。
「そうか、興味があるか。なら─────」
彼は右手の人差し指を自らの足元へ向ける。
「膝と手、そして額を床に付けてお願いしてみろ」
理解が及ばなかった。
もともと彼の素振りからまともな話を聞けるとは思ってもいなかったが、口から出たのは想像を遥かに上回る一言だった。
土下座をして頼み込め、と。
入学して間もない頃に彼がわたしに言ってきた『1億ポイント』でのクラス移動の件に通じる吹っ掛け方だ。
彼とまともに取り合うことは不可能だと判断する。
踵を返して立ち去ろうとしたとき、さらに後ろから声が掛かる。
「ひとつ教えておいてやる。コレはまだまだ序盤だ。お前にはもっと面白いもん見せてやる。だから今はせいぜい良い子ぶってるんだな。参考までに、今の二年生は149人らしいぜ?」
その言葉を聞いてわたしは何か反応することもなく、その場を立ち去る。
すぐ後ろを神宮くんが付いてくる。
「春宮さん、辻堂くんと知り合いでしたか? かなり雰囲気が悪そうなかんじでしたが……」
「前に少しだけね。ただ、そんな話すような仲ではないよ。一方的に喋られているだけ」
「そう、でしたか……。彼は危ない人ですね」
素行も悪そうな印象を受けたが、何より。
『コレはまだまだ序盤だ』
その言葉が示すものは、平和を想定した学校生活を不穏そのものにさせるものだ。
十中八九、クラスの生徒の退学騒ぎには彼が関係している。つまりこの先に待つのは、彼による退学者の続出。
ハッタリである可能性も多いにあるが、その後に言っていた二年生の人数が気になる。
149人。それは11人もの退学者が出ているということ。
この学校が暴力に対して厳罰を下しているのか?
その答えは、生徒会室へ行けば直接的なことを聞かずとも分かるだろう。
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