171: ◆yOpAIxq5hk[saga]
2021/09/14(火) 23:27:35.85 ID:uJ9TLURy0
人気の無い落ち着いたベンチに腰をかけ、ゆっくりと話を始める。
「錦山会長から聞いたよ。今日、春宮さんが生徒会に入ることになったって。そして同時に、僕も入ることになったって。Cクラスの立石くんには謝るとも」
「……そのようですね」
遅かれ早かれ、わたしに声をかけるつもりだったとは聞いていたが、どうにも立石くんの枠を奪ってしまった気がしてならない。ただ、そのことを訊いても明確な回答は貰えないだろう。
わたしは首を振り、そのことを忘れようとする。
「春宮さんのことは聞いているよ。去年の全国模試で一位を取ったことも、今日の体育のことも。僕なんかとは違って、才能に恵まれているようで羨ましいよ」
やや皮肉げに言う彼に、何かを言ってあげたかったがそれは叶わない。わたしは彼のことを一切知らず、彼はわたしの成績を知っている。
「わたしなんかより」という話は出来ない。
神宮くんとはどんな生徒なのか、今のところわたしに一切情報がない。錦山先輩が彼を選んだ。ただそれだけの情報しか持ち合わせていない。
「ごめん。わたし、神宮くんのことを何も知らない」
「あはは、そうだよね。まだ学力テストとかもやってないし、僕のクラスは体育もまだだから。強いて言うなら、そうだね。自己評価になってしまうけど、僕は普通だよ。勉強が得意な訳でも、運動が得意な訳でもない。かと言って苦手でもない」
普通であること。
それは、難しいらしい。
人は普通に憧れる、と本で読んだことがある。
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