172: ◆yOpAIxq5hk[saga]
2021/09/14(火) 23:28:07.88 ID:uJ9TLURy0
「理解できないよね、春宮さんには。言い方は悪いけど、君は普通じゃない。良い方向に才能が上振れし過ぎている人間の代表例だ。もし君が普通であることを渇望するとき、それはその他大勢の人が望む普通とは真逆なんだろうね」
言っていることの理解はできる。
実際にわたしは普通であることを何度か望んだことがある。それは、テストで良い点数を取りすぎないこと。限りなく普通を示す平均点を取ろうと努力した経験が昨日のように思い起こされる。
その一方、点数の悪い学生は一回は考える。せめて普通くらいの点数を取れたら、と。
わたしは100点を50点に、他の人は10点を50点に。
そういう意味で、真逆の普通なんだろう。
「あぁ、気を悪くしたらごめんね? 決して悪気は無い、つもりなんだ。僕は君が憎いほど羨ましいから」
「……そう、ですか」
ここで「わたしなんて碌な人間じゃないです」と答えるのも何か違う気がする。
今はまだ神宮紫苑という男子生徒のことを理解できていない以上、肯定も否定もするべきでない。
ただただ彼の言葉に耳を傾け続けるべきだ。
「と、ごめん。こんな話をしにきたんじゃなかった。改めて来週から、僕たちは生徒会の一員となる。その挨拶をしようと思ったんだ。まずは同学年の春宮さんにね」
「こちらこそよろしくお願いします。わたしも近々、お会いする機会を探そうと思っていました」
「そう? なら良かった。あと、出来ればタメ口にしてもらえないかな? 一応、同学年なわけだしね」
「ぁ……うん、わかった」
わたしが頷くと、彼は携帯を取り出す。
「先輩たちに勧められたゲーム、やってる?」
「うん、まだ全然だけど─────」
春とはいえ、今夜は冷える。
しかしそれが気にならないほど、わたしと神宮くんは話し込む。主にゲーム、いや、ゲームの話だけで。
彼はゲームが得意なようだった。
わたしが行き詰まっているところもすぐに解決し、その先へ進むことができた。
およそ一時間。二人でゲームをして、解散となる。
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