24:名無しNIPPER
2021/09/04(土) 11:39:42.66 ID:Zqi5a8gZ0
「行きましたか…」
私はおばけが広場の向こうに去っていくのを確認し、サヤさんを見て言います。
「もう、行ったようですよ」
「そうですか…」
はぁ…とサヤさんは肩をおろし、がっくりとした様子で呟きます。
「やっぱり、お化け屋敷なんて来るべきではなかったんですかね」
「まぁそう言わずに。あのおばけたちも、脅かしてくるだけで何もしてはこないみたいですよ」
笑みをつくってみせると、サヤさんは言います。
「あのおばけ、実はジェットコースターに乗っているときに出てきたものと同じ姿をしていたんです。それがとても恐ろしい姿で、ついそれを思い出してしまいました」
「そうですか。サヤさんはジェットコースターではあのようなものたちと遭遇していたんですね」
私が見たバラ色の景色とは大違いです。
サヤさんは、ジェットコースターに乗っているとき、恐怖の魔法がかかった席で妖怪と遭遇し、何度も暗闇のなかを彷徨っていたのでした。
気がつくと、明るかったお城のなかも、どことなく薄暗くなってきているように見えました。
サヤさんは顔を伏せ、涙を浮かべます。
「ぼくはここから出られるのでしょうか」
サヤさんはじっと動こうとしません。
私は言いました。
「それは怖い出来事でしたね、サヤさん。でも、今は私がついています。心配しなくても、ここから出られますよ」
私は杖で明かりを照らします。
「こうすれば部屋も明るくなりますし、何より、ここは単なるお化け屋敷ですから」
そういうと、サヤさんは少し元気を取り戻したように立ち上がり、「はい」と頷きます。
きっと出られるでしょう。
私とサヤさんは明かりを照らしながら、お城の出口を目指して、また歩きだすのでした。
35Res/36.01 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20