21:名無しNIPPER
2021/09/04(土) 10:33:55.86 ID:/9CKO7P40
大きな噴水の前で、サヤさんは虹を眺めながらわぁとため息を漏らしていました。
「イレイナさん、この虹はどこから現れているのでしょう。ここには日差しもさしませんし、灯りでこのような虹になるでしょうか」
「たしかにとても綺麗な虹ですね。日差しがさしてないなら、魔法でつくられているのでしょうか」
「そういえば、ここ魔法がかけられた遊園地ですもんね」
サヤさんはぶらぶらと噴水の周りを回りながら、噴水を眺めます。
「綺麗な噴水に、こんな虹が見られるなんて、なかなか得した気分ですね」
「そうですね…」
返事をしながら、私は考え事をしていました。
この虹が魔法でできているのなら、今までの豪華なシャンデリアやダイヤモンドなどの様々な備え付けも魔法でできているのでしょうか。
むかし、こんな話を聞いたことがありました。
ある旅人が旅をしていたところ、大雨が降り、止まなくなったので、雨宿りをしようと見かけた屋敷に入ります。
屋敷に入ると、そこは人の気配もなく、手入れもされていない暗い屋敷でした。
旅人は、ここはどんな屋敷なのだろうかと思いなかに入って散策をします。しかし、歩いても歩いても見るのは同じ景色ばかりで何も変わり映えはしません。
やがて帰ろうと思った旅人は外に出ようとするのですが、中に入り込んで道が分からなくなってしまい、出口を探して屋敷のなかを彷徨います。
しかし、とうとう出口が見つかることはなく、旅人は最後はひとり生き絶えてしまったとか。
私はサヤさんに呼びかけます。
「サヤさん。もしこのお城が魔法でつくられたもので、数々の装飾品も魔法で見せられているのだとしたら、私たちは本当は薄暗いお化け屋敷のなかを歩かされているのかもしれません」
サヤさんは「ひっ」と少し飛び上がり不器用な笑みを浮かべてこちらを見ます。
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