6:名無しNIPPER
2021/08/23(月) 01:27:02.97 ID:Uc90J3hWO
「ユリちゃんのこと、好きなんだ」
泣きながら笑いながら、言葉にすると、何でこの一言を何年も言えずにいたのだろうかと思うほど簡単に音にできた。
「だから歌ってきて、よかったなって」
それ以上は言えないくらい感情が爆発して、どうにか声をあげずに泣くよう嗚咽した。感情が昂っていて、何か言われるとどうしようもなくなりそうだった。
ユリちゃんは、あの頃お姉さんぶりたい時によくしていたように、僕の頭に手を置いて撫でた。あの頃は僕より背も高かったけど、今では少し手を上げなければ届かない。それでもその手は懐かしい暖かさで、少し気持ちが落ち着いた。
数秒かもしれないし、数分かもしれない、はたまた数十分かもしれない。興奮状態から落ち着くまで彼女はそうしてくれていて、僕が潤んだ瞳で彼女と視線がぶつかるまで、黙ってそうしてくれていた。
「ありがとう」
それがどういう意味で出て来た言葉なのか分からなくて、僕はそのまま彼女を見つめた。
「ヨウちゃんの歌が好きだからさ、私はヨウちゃんのファン第一号だから」
そこで一度踏みとどまって、少しの間を置いて彼女は言葉を続けた。
「これからも楽しみにしてるし、ずっとヨウちゃんの歌が好きだよ」
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