5:名無しNIPPER
2021/08/23(月) 01:26:25.83 ID:Uc90J3hWO
こうやってたまに相手をしてもらうだけでも良いと。僕が多くを求めなければ、僕がこの苦しみから逃げなければ良いと。
「でも、東京に行ったらヨウちゃんの歌が聞けなくなるのは残念だな」
「もっと良い歌手がいっぱいいるよ」
「私はヨウちゃんの歌が好きだから」
上手いとか下手とかじゃなくてさ、と付け足された。それだけで、全てを認められた気がしてしまった。今までに歌ってきたどの歌も、その一言を聞きたいが為だった。
僕自身のことを好きだと言ってくれたわけじゃないのは分かっているけれど、それでも嬉しかった。涙が止まらないほどに。
「え、何で? 大丈夫? え? 何、え?」
久しぶりに彼女がこんなに慌てているところを見た気がして、泣きながら笑ってしまった。
「いや、嬉しくて、つい」
歌っていることが報われて、とは言葉にしなかった。それを言葉にすると、何だか嘘っぽくなってしまう気がした。
だから代わりに、飲み込んでいたことを口にした。
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