鎮守府生まれの提督さん
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4: ◆CrAv5R2gC.[saga]
2021/08/12(木) 10:33:23.62 ID:1HuCQJGK0
「……で、これはどこまでが本当なんだ?」

「さぁ?」

先程まで一瞥もせずに熱心に読んでいたそれを机の上に軽く放る。表紙には『中将の護衛任務依頼』と記されていた。

「とうとうこんな任務も来たか……」

男は鼻で笑い、天を仰ぐ。

鎮守府の指揮官であればなんらおかしいことは無い護衛任務。

問題は"誰が"、"何から"護衛するかだ。

「この依頼書を受け取った際に被害にあった子から直接聞いたのですが、そこに書いてあることそのままでした」

「……いつも思うんだけど、なんでお前が俺宛のものを全て管理してるの?」

「いつも言ってますが、提督がだらしないからです。私、一応秘書官なので」

「指示って上から順に下りてくるものだろ?なんで俺飛ばして秘書官が上層部からの窓口になってるの」

「私の仕事なので」

「確かに俺がいないときは頼りにしてるが……でも納得いかんなぁ」

今度は純度100%の溜め息が出る。秘書官は彼のぼやきを無視した。

「で、どうするんですか?」

「受けるしかないだろ……っと」

報告書を整え立ち上がる。急に動いたために少しふらついてしまった彼を、秘書官は横目で見て小言を吐いた。

「鍛練が疎かになってませんか」

「仕方ない。確かに以前よりかは鍛える時間は減ったさ。日々実践のみだ」

「……私たちがサポートできていないと言いたいのですか?」

先ほどからの軽口とは異なり罪悪感の乗った重い返事がきたので男はひとつ咳払いをした。

「嫌味を言うなよ……十分助かってるさ」

男は逃げるように廊下への扉を開いた。

「じゃあ後は頼んだぞ。現場は近いし明日には帰ってくる」

それだけ言い残して部屋を後にする。

「ちょっと!」

少女が男の後を追って扉から顔を出すも、返事すら待たずに飛び出した後ろ姿はすでに玄関から出ていくところだった。

「……まったく…」

1人残された彼女はそんな男を呆然と見送り、少し笑って机上の書類を整頓し始めたのだった。


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