1:名無しNIPPER[sage]
2021/07/18(日) 18:56:08.63 ID:RbuETmKO0
諸君、士官学校卒業おめでとう、心から祝福させてもらうよ。
君たちはこれから各鎮守府に提督として赴任することになるが、最後に一つ大事な話をしておこう。
この戦いの理由だ、なぜ艦娘が深海棲艦と戦うかわかるかね?
深海棲艦から人類を守るため?なるほど、確かに人類は深海棲艦によって大きな被害を受けた。
しかし、この八年間というもの人類の死者は一人もいない、海での事故死はもちろんあるが深海棲艦によるものはない。
多くの艦娘たちが傷つき、あるいは撃沈されたが、人類への被害は食い止められている、艦娘たちの奮闘努力には大いに敬意を払わなくてはなるまいね。
不思議なことに深海棲艦は艦娘を執拗に狙う、まるで親の仇であるかのようだ。
今では人類の船が深海棲艦の横を通っても無視して艦娘を追いかけて行く、艦娘がオトリとなっている?いやいや、そうではないんだ。
深海棲艦にとって艦娘を撃沈することが存在理由となっているのだよ。
もはや人類と戦っていることなど深海棲艦は覚えていまい、ひたすらに艦娘を憎み、追い求めている。
君たちが着任する鎮守府周辺には敵深海棲艦が満ち溢れている、いくら倒してもきりがないと思うだろう。
だが鎮守府から10キロほど離れた都市は平和そのものだ、かつては外出禁止令が出され人がいなかった海岸も海水浴客で賑わっている。
もう深海棲艦は人類に対する興味を失っている、いや忘れてしまったと言っていい。
かつて深海棲艦が人類の前に初めてあらわれたとき、人類には対抗できる兵器はほとんどなかった、君たちも資料アーカイブで海軍艦艇と深海棲艦の戦闘をみたことがあるはずだ。
海軍の艦船は次々と撃沈され、人類は海洋から駆逐されるかと思えた、八年前に投入されたのが新兵器「艦娘」だ。
君たちも基礎知識として講習を受けたかな、鹵獲された深海棲艦を洗脳改造し製造されたのが「艦娘」となった。
初期の頃はずいぶんと乱暴な手術が行われたようだがね、技術の進歩とは素晴らしい、今では見た目は人間の少女そのままだ。
だが彼女たちは生体兵器なのだから、少女と思って手を出せば痛い目をみることは注意しておきたまえ。
深海棲艦を洗脳する過程で判明したのが、彼女の原記憶の存在だ。
かつての大戦で敵味方に別れて戦った軍艦の記憶がそれだ、船に記憶があるのが理解できないかね?
人間の脳とて分解していけば電気信号とタンパク質に過ぎない、無機物に記憶があってもおかしくはあるまい。
人類の戦いによって暗く冷たい海底に沈められ、何十年も過ごしたことが人類に対する憎しみとなったのだろう。
憎しみがボロボロに錆付いた鉄の船体を造り替え、人類へ復讐するために海上にあらわれる、それが深海棲艦というものだ。
我々は洗脳で人間に対する憎しみを消していったが、全ての憎しみを消し去ってしまえばタダのロボットになってしまうことに気がついた。
ロボットでは多様な戦場に対応できない、ある程度の憎しみや感情は優秀な兵器として必要だった。
結果として深海棲艦に対する果てしなき増悪が艦娘を支配することになった、悲しいかな彼女たちが戦うのは深海棲艦が憎らしいからだよ。
艦娘の憎悪を利用して人類を守る、罪深いことだね、艦娘が哀れすぎて涙すら出てきてしまう。
だが忘れてはいけない、深海棲艦が多くの人類を傷つけ殺したことを、艦娘が深海棲艦から造られていることを。
人を殺した罪を深海棲艦を[ピーーー]ことで償う、提督はその手伝いをしなければならないのだよ。
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2:名無しNIPPER[sage]
2021/07/18(日) 18:57:32.24 ID:RbuETmKO0
最初の「艦娘」が完成した時、我々はそれの量産に取り掛かった。
海軍も官僚組織である以上、予算の制約は免れぬし、前線からの新兵器投入の要請は急を告げていた。
同じ艦娘を大量生産することが最適解だと思われたが、失敗に終わった。
3:名無しNIPPER[sage]
2021/07/18(日) 19:00:29.60 ID:RbuETmKO0
私もかつては提督として鎮守府の指揮をとっていた、その経験を話すことは無駄にはならないだろう。
鎮守府生活というのは退屈なものだ、毎日任務をこなし司令室で艦隊の戦闘を見守る。
毎日しなければならない任務に「建造」がある、捕虜収容所から活きのいい深海棲艦を選び洗脳改造することの別名だ。
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