2:名無しNIPPER[sage]
2021/07/18(日) 18:57:32.24 ID:RbuETmKO0
最初の「艦娘」が完成した時、我々はそれの量産に取り掛かった。
海軍も官僚組織である以上、予算の制約は免れぬし、前線からの新兵器投入の要請は急を告げていた。
同じ艦娘を大量生産することが最適解だと思われたが、失敗に終わった。
君たちも艦隊編成の基礎で習ったはずだ、同じ艦娘は同じ艦隊に配備することができない。
量産された彼女は同じ艦娘に拒否反応を示した、気持ちはわからないでもない。
キミが家に帰ったときに同じ顔と記憶を持った別人がいて、キミの家族と仲良く過ごしていたらどう思うかね?
もちろん軍隊は命令によって支配される、無理やり同じ艦娘を同じ艦隊に所属させたさ、結果は発狂して共食いをはじめた。
洗脳の過程で記憶の消去をやりすぎたせいかもしれない、彼女たちには軍艦の記憶しかない、それが人間の身体をもち生活し戦争をしなければならない。
どこかで無理が生じるのもしかたがないことだろう、かつて我々が成年クローンの作成に失敗したのも同じ理由かもしれないね。
とはいえ、この共食いにもメリットがあった、生き残った艦娘の戦闘力が飛躍的に向上する、これが「近代化改修」さ、今はもっとスマートな方法になったが。
艦娘の大量生産が失敗したが、試験的に実戦投入された初期型艦娘のおかげで興味深いことが判明した。
深海棲艦がなぜあのような姿をしているか、理解できるかな?
まるで軍艦と工業製品と人間をミキサーにかけて混ぜ合わせたようだ、おぞましいものだ。
深海棲艦は復讐のために自らを人間に擬して体を作り上げた、それがもっと人間に近い艦娘を見たらどう思うかね?
心を持った故に人間に近づきたいが、戦うための身体は捨てられぬ、深海棲艦が成りたくて成れない姿が艦娘なのだよ。
艦娘が人間の少女にそっくりな理由が理解できたかね?あの姿が深海棲艦の果てしなき増悪を産み出している。
そのおかげで人類のことは深海棲艦の記憶から消え、人類は平和に暮らしていける、感謝しなければならないな。
こうして深海棲艦は艦娘をどこまでも憎み続ける、艦娘と深海棲艦の憎しみのループがはじまったわけだ。
彼女たちは許せないのだよ、自分自身と同じ記憶を持ち優れた容姿が存在していることが、だから傷つけ殺しあう。
撃沈された艦娘が深海棲艦として甦り、人としての心を求めて艦娘を狙い沈め、転生する。
彼女たちは延々と輪廻を繰り返すことになる、仏教徒ならいつかは成仏しそうだが、彼女たちは殺生の罪悪を重ねている、成仏はできまいね。
3Res/7.78 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20