貝木泥舟「竈門炭治郎? 誰だそいつは。知らん」
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2:名無しNIPPER[sage saga]
2021/07/16(金) 20:57:03.63 ID:HHo7aQtFO
「炭は要りませんか?」

寒村と呼べるほどの田舎町で炭を売る少年の姿を見かけた。みすぼらしく、健気な子供。
周囲から炭治郎と呼ばれるその子供が売る炭は飛ぶように売れていて、詐欺師とはいえ、商売人としてどのような秘訣があるのか気になった俺は、ひとつ炭を買うことに決めた。

「ひとつ貰おうか」
「炭をひとつ、ですか?」
「何か問題があるのか?」
「あ、いえ……炭をたったひとつだけ買うお客さんは珍しかったもので」

不審がられてしまったので、ここはひとつ嘘を披露してやろう。懐から和紙を取り出す。
遊廓で遊女から盗んでおいた、和紙の束だ。

「俺は画家でね。丁度、画材を切らしてしまったので、その炭で描こうと思ったわけだ」

炭の一欠片を持ち、サラサラと特技である似顔絵を描いてやると竈門少年は大層喜んだ。

「わあっ! すごいなぁ。あの、もし良かったら家で待っている俺の家族も描いてくれませんか? もちろん、炭のお代は結構ですので」
「引き受けよう」

タダより高いものはない。当然のように代金を踏み倒した俺は、仕事のついでに竈門家へと足を運ぶことにした。臥煙には余計なことをするなと釘を刺されていたがそもそも仕事を受けるかどうかさえ、俺は決めていない。


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