9:名無しNIPPER[sage saga]
2021/07/11(日) 21:59:56.14 ID:0j9uV3lDO
「俺は……長門。お前のことが……」
そう切り出すのにどれほど時間が経っただろう。1時間かも知れないし、2時間かも知れない。その間、長門はずっと待っていてくれて、もしかしたら最初に抱擁したその日から待っていたのかも知れなくて、そう思うとすぐにでも結論を出さないといけないと焦って、上手く言語化出来なくて、言い淀んで。
「話す必要はない」
「話す必要はある」
こちらを気遣う長門に、きっぱりと告げる。
これは口に出して言わなければならないことでそれを否定することだけは許せなかった。
それは長門のためというよりも、軽率な誘いで期待を持たせた自らへの戒めであり、自分はそういう不真面目な男ではないと宣言するために必要な覚悟である。そう、覚悟だ。
「俺は、お前が……」
「待って」
意を決して想いを口にする直前で、長門が待ったをかけて床に足をつけた。抱擁を解くや黒檀の視線をじっと扉へと向けている。
次の瞬間、扉がガタガタと音を立て始めた。
しかし、開かない。長門が防いでいるのだ。
すると廊下から、何やら声が聞こえてきた。
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