825: ◆ZS3MUpa49nlt[saga]
2022/01/22(土) 18:49:34.86 ID:7SptLiMdo
一方通行「…………」
一方通行は何も言わない。
彼もわかっているのだろう。その意味を。
わかっていても自分では答えられないのだろう。
だから、結標は代わりに言う。
結標「私ね、思うのよ。たぶん、これはどちらかが偽物だとかそういう話じゃない。どちらも本物なのよ。紛れもない私が抱いている気持ちなのよ」
結標「けど、こんな相反するものがいつまでも共存できるわけじゃない。いつかはどちらかを決めないといけないときがきっと来る」
そして結標は再び掴んだ。今度は袖ではなく、彼の左手を、しっかりと。
結標「だから教えてよ? 見極めさせてよ? 貴方がどんな人なのかを。私のどちらの気持ちが正しいのかを」
結標「この気持ちをハッキリさせないまま、私の前からいなくなるなんてダメよ。絶対に逃がさないから」
結標淡希の顔は真剣そのものだった。嘘や冗談を言っている様子は皆無だ。
ほのかに紅くした頬。正面から向き合おうとする目。その目にやんわりとにじむように浮かぶ涙。ガタガタと震える手。
それらを見た一方通行は、大きくため息をついた。
一方通行「……やっぱりオマエはオマエだよ。俺の知っている結標淡希だ」
結標「? どういう意味よ」
その問いに、一方通行は息を吐くように小さく笑い、
一方通行「面倒臭せェ女っつゥことだよ」
そう答える一方通行の表情は、穏やかな優しいモノだった。
結標「うぐっ……」
結標が小さく声を漏らした。
ドクン、と結標は自分の心臓が大きく鼓動したのがわかった。
思わず表情が崩れそうになり、目を逸しそうになったが、息を整えて、
結標「……ふふっ、貴方にだけは言われたくないわね」
笑ってそう返した。
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