824: ◆ZS3MUpa49nlt[saga]
2022/01/22(土) 18:48:50.65 ID:7SptLiMdo
結標「一つだけ言わせて」
結標は顔を下げたまま話し始める。
結標「たしかに私は貴方のことが嫌いよ。世界で一番って言っていいくらいに、視界に一切入れたくないくらいに、身体が震えるほどの恐怖を覚えるくらい」
結標「けどね、その気持ちとせめぎ合っているもう一つの感情が、私の中にはあるの。それはさっきのとはまったくの真逆な感情」
結標「世界で一番って言っていいくらいに、ずっと離れたくないと思うくらいに、一緒にいると安心感を覚えるくらい」
結標は顔を上げた。
少年の背中へ向かって、投げつけるように言い放つ。
結標「私は貴方のことが好きなのよ!」
結標淡希の口から出てきた、絶対にその口から出てこないであろう言葉を聞いて、一方通行は目を大きく見開かせた。
結標「おかしいでしょ? わけがわからないでしょ? 笑っちゃうわよね? そんな相反する感情が混在しているなんて」
結標「私は九月一四日のときの貴方しか知らない。そんな感情が生まれるはずなんてない。なのに、私はたしかにそう想えている」
結標「ねえ、一方通行。これは一体どういうことだと思う?」
ふぅ、と一方通行は息を吐いた。
目を閉じながら、諭すように答える。
一方通行「……決まってンだろ。まがい物だよそれは」
結標「だったら」
結標は袖を掴んでいた手を離し、じゃらりという音と共に、何かを取り出した。
結標「これもまがい物なわけ?」
一方通行は振り返って、その何かを見た。
一方通行「ッ……」
一方通行が動揺したかのように、見開かせた両目の瞬きが止まる。
それはペンダントだった。
四葉のクローバー型に加工された赤い宝石を金のビーズで縁取っている。
学生が持つものとしては高級感のあるアクセサリーだった。
見覚えがあるモノなのか、一方通行はそれを凝視したまま動かなかった。
結標は手にしたペンダントを見ながら、
結標「これを見ると、何か胸をギュッと締め付けられるような気持ちになる。楽しくて、嬉しいような、そんな感じの気持ちに」
結標「いつからこれがここにあるのかもわからない。けど、これはたしかにここにある。これも貴方の言うまがい物のなのかしら?」
そう言って結標は一方通行の赤い瞳を見る。
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