結標「私は結標淡希。記憶喪失です」
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773: ◆ZS3MUpa49nlt[saga]
2022/01/15(土) 23:51:09.08 ID:2z6G7I5Go


 具現体は顔をしかめた。自分の根幹を為す部分を否定されたような気がしたからだろう。
 存在意義を揺らされた具現体は考え込むように口を閉じる。
 風斬は畳み掛けるように、


風斬『あなたは結標さんを救い出すためにここに来たはずです。彼女を守るためにこの場所に立っているはずなんです』

風斬『恨んだ敵を殺すためなんていうそんなつまらない理由で、あなたはここにいるわけじゃないはずなんですよ』


 風斬は視線を地面に横たわった結標淡希の影へ向ける。


風斬『何より、結標さんはそんなことを望んでいないはずです』


 具現体は風斬につられるように結標の影を見る。
 黒い翼を背に君臨する一方通行を見る彼女の顔は、不安や困惑が入り混じったような表情だ。
 圧倒的なチカラで君臨する白い怪物に恐れているようだった。
 しかし、反対にこうとも思える。
 何かの間違いを起こそうとしている少年を心配しているようにも見える、と。


一方通行『むす、じめ……、あわ、き……』


 具現体は何かを思い出したかのように、少女の名前を呟く。
 佐久を破壊する意思しかない、彼の中に守るべきモノの存在が介入した。

 これは賭けだ。風斬が心の中で言う。
 あれは佐久を殺すためだけに生まれた存在だ。それ以外はまったくない負の存在。
 その中に結標淡希という、元々の彼が持っている意思の根幹を担っている正の部分をぶつけた。
 プラスとマイナスが合わさり相殺するように、具現体の中にある殺意を消滅させる。
 そうすることによって、一方通行を正常に戻し、この場を収める。


一方通行『むすじめ、あわき……、結標、淡希……』


 具現体が頭を抱え葛藤する。彼の中の二つの意思がぶつかり合っているのだろう。
 数十秒の葛藤の末、


一方通行『……そォだ。そォだった。俺は、俺は……』


 彼の中に残ったものは。




一方通行『アハギャヒャハハハハハハハハハハハハハギャハハハハハハハハハハハハハハハハハハァッ!!』




 具現体は笑った。邪悪に。全てを見下したように。
 口の端を引き裂きながら、具現体は風斬を見る。


一方通行『そォだァ! 全部思い出したァ! オマエのおかげで全部思い出したンだァ!!』

風斬『な、なにを……!』


 心のつっかかりが取れたように、具現体は楽しそうに話を続ける。


一方通行『たしかに俺はあの女を守るためにここいるッ! 約束を守るためになァ! だから、あの女に危害を加えやがる存在を排除するために俺は存在するゥ!』


 具現体は壁へ磔にされた佐久の影へと目を向ける。





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