結標「私は結標淡希。記憶喪失です」
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772: ◆ZS3MUpa49nlt[saga]
2022/01/15(土) 23:50:14.90 ID:2z6G7I5Go


 風斬氷華は『正体不明(カウンターストップ)』と呼ばれる少女だ。
 その正体は、学園都市に住む能力者たちが無自覚に発する『AIM拡散力場』が集まり、人の形をとった集合体。
 普段は『虚数学区』というAIM拡散力場が集合して出来た世界に住んでいる。
 虚数学区は学園都市と常に隣り合うように存在する世界だ。風斬氷華はそんな世界を行き来しながら生活している。

 今、彼女が立っている世界はそのAIM拡散力場で出来た世界だ。
 つまり、目の前に立っている一方通行という少年は、その世界に入り込んでしまった迷人ということになるのか。

 現実はそうではない。彼は一方通行ではなく、一方通行の形をしたチカラの塊だ。
 一方通行は今なお現実世界に存在している。破壊衝動のままに行動する戦闘マシンとして。
 意識が吹き飛ぶほどの衝撃を受けた彼の精神が、彼の能力を通してAIM拡散力場へと溶け出して、この世界へと現出させたのだ。
 役割は『殺意の遂行』。佐久という男を破壊する役割だけを与えられたチカラが具現化した人形だ。

 だから、彼の中に残っているのは佐久に対する憎しみと怒りだけだった。


一方通行『俺を止めに来た、だと?』


 一方通行の形をした具現体が顔をしかめた。


風斬『はい』


 風斬は一言だけ返事をし、そのまま続ける。


風斬『やめてください。これ以上、罪を重ねるのは』


 風斬氷華の考えていることは、現実世界で必死に説得していた土御門と同じことだった。
 一方通行を元の居場所へ帰す。
 風斬はかけがえのない友人である少女を、それを取り巻く世界を守るために生きていくと誓っている。
 彼は、その少女にとって大事な存在の一つだ。彼を失うことは彼女の世界を大きく歪めてしまうことに等しい。
 悲しむ少女の顔を見たくない。それが彼の前に立ちはだかる風斬氷華のたった一つの意思だった。


一方通行『俺にコイツを殺すな、って言うつもりかよ』


 風斬の言葉の意味を理解したのか、具現体は噛み砕いて返した。
 少女は静かに頷いた。それを見た具現体が、


一方通行『ふっざけンじゃねェ!! 俺はコイツを殺すためだけにここへ立ってンだッ!! そンな安い言葉を突き付けられてハイハイとやめるわけねェだろォがッ!!』


 目を見開かせながら吠えた。具現体の怒りに反応したのか、彼の輪郭が大きく揺らめく。
 風斬は動じることなく問いかける。


風斬『本当にそうでしょうか?』

一方通行『どォいう意味だ?』

風斬『それが本当にあなたのやりたかったことなんですか? あなたが本当にやるべきことなんでしょうか?』

一方通行『何だと?』





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