771: ◆ZS3MUpa49nlt[saga]
2022/01/15(土) 23:49:15.24 ID:2z6G7I5Go
一方通行はもう一歩踏み出す。さらに歪む。
もう一歩踏み出す。また歪む。
ニ歩、三歩と近付いていく。顔がグチャグチャになるくらい歪む。
一方通行は理解した。熊のような大男の影を殺す方法は簡単だったのだ。
ただ近付くだけでいい。近付くだけで彼は苦しむ。
つまり、一方通行にとって彼はゴールなのだ。彼との距離がゼロになれば、最上級の苦しみを与え、命を奪うことができるだろう。
だから一方通行は、進む、進む、進む。道中に居る白い少年や金髪の少年、赤髪の少女や筋肉質な女の影たちへ、気を止めることなく一目散に。
そして、ついにたどり着いた。
熊のような大男の影を目の前にして、一方通行は足を止める。
今にでも崩れ去っていきそうな大男の顔を、見上げるように眺めた。
一方通行の中にある憎悪や憤怒の炎が燃え上がる。なぜこのような感情が湧いてくるのかを彼は理解していない。
だが、この感情に身を任せること。それが一番正しい判断だと一方通行は思っている。
一方通行『……コレで、終いだ』
ゲームの終了を告げるように、少年はか細い手をゆっくりと大男の顔へと伸ばす。
触れてしまえば壊れてしまうだろう。指先がかすっただけで潰れてしまうだろう。
だからこそ、一方通行は鷲掴みにして握り潰してやろうと、男の目前で手を大きく広げた。
??『――待ってください!!』
遮るように、誰かの声が少年の鼓膜へ突き刺さった。
一方通行『……あン?』
差し出した手を引っ込めて、一方通行は体ごと後ろへ振り向く。
声の持ち主はすぐ目の前にいた。
少女だった。長い茶髪のストレートヘアを一束だけゴムで束ねて横に垂らしている。
大きな眼鏡を掛けていて、制服のスカートを膝下まで伸ばしている、一見地味な外見。
一方通行『オマエは誰だ?』
少女はじっと一方通行を見つめながら、引き締まった表情で答える。
風斬『――私は「風斬氷華」。あなたを止めに来ました』
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