結標「私は結標淡希。記憶喪失です」
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743: ◆ZS3MUpa49nlt[saga]
2022/01/08(土) 11:42:32.31 ID:Q+V+Oj11o


 上条当麻はエレベーターの裏にある隠し階段の前に、つまり、結標淡希がいると言われている場所へと繋がる入り口の前で立ち尽くしていた。


上条「……クソッ、何やってんだ俺は……! 早く動けよ。今さら何をビビってんだよ……!」


 上条は呟くように自分を奮い立たせようとする。
 しかし、少年の足は根を生やしたように動かない。


上条(さっき爆発みたいな音が聞こえた! 地震みたいなもんが起こった! もしかしたら結標の身に何かが起きているかもしれねえんだぞ!?)


 結標淡希を助けたい。その気持ちはたしかに存在する。


上条(さっき決めただろうが! 俺がやりたいと思ったことが俺の『役割』なんだって! なのに、なんで動かねえんだよ!? 俺の身体!!)


 頭ではそう思っていても身体は正直、というヤツか。
 どこか無意識の部分で恐れているのか。再び、結標淡希に拒絶されるかもしれないということを。

 くっ、と上条当麻は右拳を壁に打ち付けた。
 拳にじわりとした痛みが広がる。


上条「はっ、何やってんだ俺!? 今何時だ!? あと何分残ってんだ!?」


 上条当麻はポケットから携帯電話を取り出し、時間を確認しようとする。

 ゾクッ、

 背筋に這い寄るような悪寒が走り、携帯電話を開こうとする上条の手が止まった。


上条「なっ、なんだっ!?」


 上条当麻は振り返る。当たり前だが誰もいない。
 小走りでエレベーターの裏からエレベーター前への廊下へと行き、確認する。誰もいない。
 それを確認したのになぜか上条が感じる悪寒は一向に収まらなかった。いや、むしろ段々と強くなっていく。


 カツン、カツン、カツン。


 なにかの音がこちらへ向かって近付いてくるのを上条の耳が捉えた。
 これは革靴で硬い廊下の床を歩いてできる足音だろうか。
 とにかく、何者かがエレベーターの裏にある隠し階段を、その先にいる結標へ向かって近付いてくる。


上条「…………」


 上条は息を飲む。心臓の鼓動が加速する。じわりと嫌な汗が全身に流れる。
 じわりとにじみ寄ってくるプレッシャーに上条当麻の息が荒くさせる。
 ついに、その悪寒が全身を包んだ気がした。

 そして、男は現れた。
 廊下の二〇メートルくらい先にある曲がり角から、革靴の音を鳴らしながら、ゆっくりと歩いて。
 その姿を見た上条当麻の全身が強張った。


上条「――て、テメェは……!」





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