結標「私は結標淡希。記憶喪失です」
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729: ◆ZS3MUpa49nlt[saga]
2022/01/08(土) 11:27:00.96 ID:Q+V+Oj11o


 博士と犬型のロボットは足音のする方向へ目を向ける。
 照明がついていない暗がりの通路から、二人の人間がゆっくりと姿を現した。
 その姿を捉え、博士はメガネのズレを直しながら、


博士「……来ると思っていたよ。『木原』君」


 ニヤリ笑い、その者たちの名前を言った。


数多「よぉークソジジイ。こんな日も昇ってないような朝っぱらから犬連れて散歩とはよぉ、ついに深夜徘徊するような歳になっちまったっつーことかぁ?」

円周「あっ、打ち止めちゃんだ。おーい、元気ー?」


 木原数多と木原円周。
 『木原一族』の二人がメンバーの二人に立ちふさがる。


博士「一応聞いておくが、一体どうやってことの場所を特定した?」


 世間話でもするように博士は質問した。


数多「あん? それはコイツに聞いたら快く教えてくれたぜ」


 数多はそう言って何かを放り投げるように右手を放った。
 ドサリ、とその何かは緩やかな放物線を描いて床に落下した。
 それは少年だった。メンバーの構成員である、彼らにとっては見覚えのあるジャケットを来ている高校生くらいの。
  

イヌロボ『――さ、査楽……!』


 犬型のロボットを操作する少年がその名を呟く。
 それは査楽と呼ばれる『メンバー』の構成員の一人だった。
 ただ、それは彼らの知っている査楽という少年の顔とはだいぶ変わっていた。
 顔が全体的に赤青く染まっていて、まるで内側から膨らませたかのように大きく腫れ上がっている。
 穴という穴から血液を流しており、頭蓋骨が砕かれたかのように輪郭が歪んでいた。

 何度も何度も叩かれ、何度も何度も殴られ、何度も何度も砕かれたのだろう。
 その様子が容易に思い浮かべられるほど、査楽という少年は惨ったらしい外見をしていた。


数多「いやー、ほんと心優しい少年だったわー。家の周りをチョロチョロ嗅ぎ回ってたようだったから、ちょこっと小突いてやっただけで、日時場所目的全部吐いてくれるなんてなぁ。こんな素直でいい子今時いないぜぇ?」


 口の端を割りながらギョロリとした目付きで、地面に転がった査楽を見下ろす。
 博士も査楽を見下ろしながら、


博士「たしかにそのようだ。物理的な拷問程度で情報を売るとは暗部組織の人間としては失格だな」


 同意する。博士の目から査楽への興味が消え失せていた。
 メガネの奥の瞳が木原数多へと向く。


博士「さて、君は私たちの目的を知った上でどうするつもりなのか」

数多「そんなの決まってんだろ」


 数多は小さいコンテナの上で寝ている少女を指差す。


数多「そこに寝ているガキを返してもらう。それはこちらにとっては大事な商品なんでな」

博士「ふん、随分と丸くなったものだな。木原数多君」

数多「あん?」


 博士がため息交じりに続ける。





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