結標「私は結標淡希。記憶喪失です」
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715: ◆ZS3MUpa49nlt[saga]
2022/01/01(土) 12:02:59.06 ID:31eSI50lo


 ただ、彼女の中に一つだけ、心残りのようなものがあった。
 最後にある人物と会いたかったという感情。
 その人物は、彼女にとって最低最悪のクソ野郎で、世界で一番嫌いな少年だ。
 死んでしまえばいいのに。地獄に堕ちてしまえばいいのに。来世でも惨たらしく殺されてしまえばいいのに。
 少年のことを思い浮かべると負の感情ばかりが頭をめぐる。

 なぜ、こんな状況でそんな少年のことを考えているんだ。
 なぜ、そんな少年と会いたいなどという感情が浮かんでいるんだ。
 なぜ、もう会えないということを考えただけで寂しさのような、悲しみのような感情が湧いてくるんだ。


結標「……『一方通行(アクセラレータ)』」


 なぜ、名前も聞きたくもない少年の名前を呟いているんだ。
 彼女自身もそれはわからなかった。


 ピシッという音が上から聞こえた。結標は視線だけを動かし天井を見る。
 通路の自分から一〇メートル先の位置。そこの天井がまるで凍った水たまりを踏みつけた後のようにひび割れていた。

 瞬間、轟音とともにひび割れた天井へ衝撃が走る。大量のガレキを床に落下させながら天井が崩れ去った。
 その余波で通路内に暴風が巻き起こる。結標を抱えていた男がその風圧のせいで少女を離してしまう。結標は再び床に投げ出された。


結標「……い、一体、何が……?」


 粉塵が巻き起こり、視界の悪くなったガレキの山を見る。
 その上に人影のようなものが立っているのが見えた。
 視界を奪っていた白い粉塵が次第に薄くなっていき、その影がくっきりと瞳に映り始める。

 その影は少年だった。
 肩まで伸ばした白い髪。汚れを知らないような白く透き通った肌。
 線の細い体付きから知らない人が見れば白人女性と間違えるかもしれない。
 首には電極付きのチョーカー。右手には現代的なデザインの杖。
 こんな特徴の塊は、この街を捜しても二人といないだろう。
 彼女がよく知っている少年だった。

 真紅の瞳をこちらへ向けながら、少年は挨拶でもするかのような気軽さで、



一方通行「――呼ンだか?」



 学園都市最強の超能力者(レベル5)の少年が語りかけた。


―――
――






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