結標「私は結標淡希。記憶喪失です」
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713: ◆ZS3MUpa49nlt[saga]
2022/01/01(土) 12:00:18.89 ID:31eSI50lo


 最初出会ったときからずっと気になっていた。なぜこの少女は自分を助けてくれたのか。
 結標を助けるためか? しかし、彼女の言葉をそのまま鵜呑みにするならまったくの他人のはずだ。
 そんな他人を助けようとする男に対して、少年院などという普通では絶対に入れない場所、そんなところまで連れてほどのことをする理由が上条には思いつかなかった。


A子「何で、か……」


 少し考えてから少女は続ける。


A子「さっき言ったように私にもやることがある、目的があるってワケ。その流れでアナタをここに連れてきただけよぉ」

上条「目的……何だよそれ」

A子「女の子のプライバシーにズカズカ踏み込んじゃう男の子は嫌われちゃうんだゾ☆」


 おちゃらけて言っているが、これ以上聞いたらブチコロスぞこの野郎と言っているのだろう。
 こちらを見つめている十字形の星がそう訴えているのを上条は感じた。


A子「というかぁ、ここで私とウダウダとおしゃべりしてるのはよくないんじゃないかしらぁ? 正直、あんまり時間も残されていないわけだしぃ」

上条「げっ、そういえばタイムリミット一五分とか言ってったっけ」

A子「早くしないと結標さんがどこか行っちゃって、また行方不明になっちゃうかもねぇ」

上条「そいつは不味いな。じゃ、俺は行くよ。ありがとな……えっと」

A子「え――」


 A子という偽名を発しようとした口を無理やりつぐんだ。
 そして、ゆっくりと息を吸って、


A子「――『食蜂操祈』です!」


 その名前を聞いた上条はうん? と疑念の表情を浮かべた。おそらく「そんな名前だったっけ」とか考えているのだろう。
 しかし、少年はいつもどおりの感じに戻って、


上条「ありがとな! しょく、ほー?」


 上条当麻は軽く手を振って通路の先へと走っていった。




A子「…………」


 少女はそれを黙って見送りながら考えていた。
 おぼつかない口調だが、彼に名前を呼ばれるのはいつぶりだろうか。心が踊る。にへら笑顔が溢れそうになる。
 だけど、これは一過性の幸せ。どうせ彼は、もう自分のことなど覚えていないだろう。
 食蜂操祈という名前はもちろん、もしかしたらA子という偽物の食蜂操祈の存在そのものも。


A子「さて、私たちも行くわよ」

警備兵達「「「「「「「「「「了解致シマシタ」」」」」」」」」


 たくさんの警備兵たちを従えながら少女は左の通路へと歩いていった。
 歩きながら上条当麻が向かっていた通路を横目に呟く。


A子「――ごめんなさい」


―――
――






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