706: ◆ZS3MUpa49nlt[saga]
2022/01/01(土) 11:49:26.20 ID:31eSI50lo
第七学区にある雑居ビルの屋上。そこでは絶えず電撃が走り、チカチカと輝いていた。
屋上の出入り口の扉に背を預けるように立っている少女がいた。
肩まで伸ばした茶髪にチャームポイントのアホ毛を風に揺らせている、見た目一〇歳前後の少女。
打ち止め。寝間着のパジャマのままで明け方の時間の寒空の下にいるため、身体を震わせていた。
彼女はそれを気にする素振りは見せていない。
なぜなら、目の前で繰り広げられている光景に目を奪われているからだ。
お姉様である御坂美琴と、謎の敵組織の手先の犬型ロボ達との戦いを。
美琴「――こんのぉ!!」
美琴は額からの電流を手に流し、それを雷撃の槍として一機の犬型のロボへと放出した。
一〇億ボルトの雷撃が犬型ロボへと襲いかかる。
バヂィン!!
雷撃の槍が命中し爆音と共にロボットが宙を舞った。
しかし、
ガシッ。
まるで高いところから落ちた猫のような体捌きで、犬型ロボットは屋上の床へと着地した。
体中に紫電を走らせているが、特にダメージを受けている様子もなく、美琴へ向かって再び走り出す。
美琴(ぐっ、コイツら……しつこい!!)
美琴は接近してくる二〇機のロボットをひたすら電撃で吹き飛ばすという、防戦一方の戦いをしていた。
なぜこのような戦いをしているのか。それは後ろにいる打ち止めという少女を守るためだ。
自分一人だけなら、この程度のロボットの群れ程度なら瞬殺できるチカラを発揮できる自信が、彼女にはあった。
守る戦いというのがこれほどキツイものとは、と美琴は冷や汗を流す。
さらに美琴にはもう一つ、苦戦を強いられている要素があった。
それは敵の犬型のロボットの存在である。
美琴は超能力(レベル5)の電撃使い(エレクトロマスター)だ。
一〇億ボルトもの出力を誇る電撃を発生させることはもちろん、磁力操作・ハッキング・マイクロ波の発生等、電磁気が絡むことならほぼ何でも行うことができる能力者だ。
例えば、ただのロボットなら美琴の電撃が直撃しただけで、高出力の電気によりCPUがショートして機能を停止させる。
例えば、ただのロボットなら美琴が磁力で操った砂鉄の塊を浴びるだけで、駆動系の細部まで入り込んだ砂鉄によって動けなくなったりする。
例えば、ただのロボットなら美琴がプログラムを電磁的にハッキングして、意のままに操るなんてことは容易いことだ。
つまり、ただのロボットが美琴と相対した場合、秒もかからないうちに完全に制圧されてしまうということ。
しかし、美琴と犬型のロボットたちとの交戦が始まってから、既に五分くらいの時間が経過していた。
美琴はこの状況の中でも冷静に分析をし、ある結論を導き出す。
美琴(――あのロボット、対電撃使いの対策処置がされてるわね……いや、もしかしたら超電磁砲(わたし)専用の対策か?)
美琴はこの五分間で様々なことやった。
一つは雷撃の槍を始めとした高出力の電撃による攻撃。
先ほど見せたように電撃を当てても、ケロッとした顔で(ロボットだから表情はないが)立ち上がり、再び襲いかかってくる。
おそらく電気を弾くような絶縁塗料のようなもので塗装されているのか、素材そのものがそういう類のものか。
並大抵の物では美琴の電撃は防ぎきれない。つまり、一〇億ボルト以上の電撃を想定した特別品だということ。
一つは砂鉄を操ることによる攻撃。
砂鉄一つ一つが高速で振動をしている為、その砂鉄の塊一つ一つがチェーンソーのような切れ味を持っている。
そこらにいるドラム缶型ロボットや駆動鎧程度の硬さならズタボロにできるほどの殺傷力だ。
だが、そのチカラがあっても犬型ロボットを仕留めることは出来なかった。せいぜい装甲の表面に傷が付く程度だ。
密閉性も大したものらしく、体全体を撫でるように砂鉄を這わせたが、内部に侵入できるような穴は存在しなかった。
一つはハッキングによる電磁的な攻撃。
ハッキングの方法は二種類ある。
一つは内部CPUへ電磁波を浴びせ直接制御を乗っ取る方法。一つはロボットを遠隔操作するために使っている電波に介入して制御を乗っ取る方法。
前者に関してはCPU周りに電磁波を通さないような仕組みを施しているみたいで、制御を奪うための電磁波を通すことが出来なかった。
後者の方法は、そもそもあれは自動制御らしく、美琴の目から見てもそういった電波類を確認できなかった為、使えなかった。
一つは自分の代名詞である超電磁砲(レールガン)による攻撃。
ゲームセンターにあるようなコインを音速の三倍で飛ばすことで絶大な威力を発揮する彼女の得意技。
これが直撃すればあの犬型のロボットたちもたちまちスクラップとなることだろう。
しかし、それはあくまで当たればの話だ。
美琴が超電磁砲を撃とうとした瞬間、犬型のロボットは蜘蛛の子を散らすようにあちこちへ逃げ回った。
そこから一機を狙い撃ちしようとしても、ロボットはうまいこと直撃を回避をした。せいぜい余波を受けて吹き飛ぶくらいで、致命傷とはいかない。
美琴の目線の移動や周囲に発する電磁波等の事前情報を察知することで、回避率を上げているのだろう。
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