結標「私は結標淡希。記憶喪失です」
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703: ◆ZS3MUpa49nlt[saga]
2022/01/01(土) 11:45:24.63 ID:31eSI50lo


 佐久は薄ら笑いを浮かべる。ゾクリと背筋に嫌なものが走るのを結標は感じ取った。
 何かがヤバイ。そんな気配を感じた結標は、佐久の脳天を狙いチカラを行使する。


佐久「――これからお前にチカラを自由に使える時間なんてもう訪れねえんだからな」


 ドスリ、と金属矢が刺さる音が聞こえた。
 その音源は標的の佐久からではない。それより圧倒的に近い距離からだ。


結標「ぐっ!?」


 ズキッ、と結標は横腹の辺りに痛みを感じた。そういえば、先ほどの音もこの辺りから聞こえたような気がする。
 自分の横腹を見た。


結標「――えっ」


 前方に立つ男目掛けて飛ばしたはずの金属矢が、なぜか彼女の横腹に突き刺さっていた。
 僅かな筋肉の収縮運動で金属矢と肉が擦れ、筋繊維を削り取るような痛みとともに出血し、衣服に赤い染みが浮かび上がる。


結標「……あ、あがっ、な、ああ」

佐久「何で、って顔してんな。気付かねえのか? 俺たちにはわからねえが、お前にはわかんじゃねえのか? 違和感みてえなもんをよ」


 そう言われて結標はあることに気付いた。横腹の激痛に隠れていたがそれは確かに感じる。
 痛みだった。頭の中を直接弄られているような小さな痛み。
 結標はこれに似た痛みを知っていた。少年院突入前に感じていたあの感覚。


結標「――『AIMジャマー』!?」

佐久「正解だ。正解者には拍手を送ってやらないとな」


 佐久はやる気のなさそうな拍手をしながら笑った。


結標「な、何でよ? 今はAIMジャマーはメンテナンス中のはず。たとえ、さっきの警報から起動準備をしたとしても、そこから五分は作動するまでかかるはずよ!」


 事実、警報の音が少年院内に鳴り響いてからまだ一分ほどしか経っていなかった。
 しかし、装置が起動しているというのもまた事実だ。
 結標は傷口を押さえながら、全身に嫌な汗を流しながら思考する。
 佐久はそんな結標を見下すように、


佐久「おかしいとは思わなかったのか? 毎年年度末に行われているはずのAIMジャマーのメンテナンスが、今回に限ってこんな中途半端な日付で行われると聞いて」

佐久「おかしいとは思わなかったのか? たかだか空間移動能力者を研究しているだけの機関が、少年院の見取り図や警備情報を事細かに持っているということに」


 問いかけるような男の説明を聞き、結標は歯噛みしながら睨む。
 佐久はそれを見て楽しそうに笑いながら、


佐久「気付かなかったのか!? お前はここにおびき寄せられていただけだったってことをな!?」

結標「おびき寄せられた……? この私が……?」


 少女は大きく目を見開いて、呟くように言った。





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