結標「私は結標淡希。記憶喪失です」
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700: ◆ZS3MUpa49nlt[saga]
2022/01/01(土) 11:38:44.10 ID:31eSI50lo


結標「――警報? もしかして気付かれた?」


 不安を煽る警告音を背に、少年院の通路を走る結標の顔が強ばる。


結標(セキュリティーには引っかからないように動いたつもりだった。ということは気絶させたヤツが見つかって、って感じか……?)


 結標はここに来るまでに五人の警備兵と交戦していた。
 全員後頭部を殴打して気絶させたのだが、その気絶した体を特に隠すとかせずに放っておいてここまで来た。
 タイムロスを恐れて手間を省いたのが失敗だったか、と結標は舌打ちする。

 しかし、結標は特に焦った気持ちはなかった。なぜか。


結標(その場合なら誰が侵入したかだとか、今侵入者はどこにいるだとかの情報は持っていないはず)

結標(仮に侵入者を能力者と見て、今からAIMジャマーのメンテを中止したとしても大丈夫ね。あれは再起動に五分はかかるはずだから)


 大丈夫とはいえ五分。決して長い時間ではない。
 なぜ結標は大丈夫という言葉を使ったのか。


結標(あのエレベーターの裏に階段があって、その階段を降りた後の曲がり角を曲がった先が独房のはず!)


 結標は自身の体を直接テレポートさせて階段へ飛び込む。
 エレベーター周りには監視カメラ等のセキュリティーが蔓延っているからだ。


結標(独房にさえたどり着けられれば問題なし。みんなの拘束を解いてここを脱出するだけなら五分間もかからないわ。私の座標移動(ムーブポイント)なら)


 階段を二段飛ばしで駆け下りる。
 L字の曲がり角の突き当りが見えた。ここを曲がればその先は――。


結標「……やっと、たどり着いた」


 曲がり角を曲がった結標の目に写った景色は狭い通路だった。
 左右に鋼鉄製の扉がズラリと並んでいる。あの扉一つ一つが独房になっているのだろう。

 結標は小走りに通路を進んである扉の前に立った。
 彼女はどこの扉に誰が収容されているのかの情報を既に持っている。
 だから、この扉の先には誰が居るかを把握していた。
 鉄の扉をノックし、扉越しに話しかける。


結標「――私よ! みんな無事!?」


 結標の呼びかけに対し、少し間を置いてから返答が来た。
 それは少女の声だった。


少女『……も、もしかして、その声……淡希!?』


 少女の驚いたような声が通路に響いた。
 それが聞こえたのか、呼応するように他の部屋にいる少年少女の声が聞こえてきた。
 その声は、結標にとって聞き覚えのありすぎる声。今まで一緒にやってきた仲間たちの声。





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