696: ◆ZS3MUpa49nlt[saga]
2022/01/01(土) 11:28:55.07 ID:31eSI50lo
上条「――ってふざけんなっ!! 俺らは絶賛不法侵入中の二人組ってことになるじゃねえか!!」
A子「あらぁ? もしかして今さら気付いたワケぇ? そういうツッコミはここに入る前にしてくれないかしらぁ」
上条「言ってる場合か! もしこれがバレて捕まったりしてみろ! 俺らがこの中にブチ込まれることになるんだぞ!?」
A子「大丈夫よぉ。バレなきゃ犯罪じゃないっていう格言があるのをアナタは知らないのかしらぁ?」
そんな格言があってたまるか、と上条は心の中でツッコんだ。
疲れたような表情で上条は入ってきた少年院の門を見た。
今ならまだ引き返せるのではないか。犯罪者から傍観者へとクラスアップ出来るのではないか。
そのようなことを考えていたが、すぐさまその必要がなくなった。
上条たちの前方に武装した警備兵が現れたからだ。
少年院の入り口からこちらをじっと見つめているようだった。
上条「いぃっ!?」
思わぬ状況に上条は変な声を上げてしまった。
引きつった顔で警備兵を見る。
軍用ヘルメットに防弾チョッキ。手には脱獄犯制圧用の機関銃。
終わった、と上条は思った。
上条当麻の右手は幻想殺し(イマジンブレイカー)というチカラが宿っている。
どんな異能の力も触れるだけで打ち消せるというもの。
それが超電磁砲(レールガン)だろうがコンクリートを容易にぶち抜くビームだろうが。
だが、そんなもの武装した兵隊に対しては何の意味もない。
さらに言うなら上条はただの喧嘩っ早いだけの普通の学生だ。
兵隊仕込の近接格闘術や一子相伝の暗殺術を持っているわけではない。
目の前にいる男を一瞬で制圧する術など彼は持ち合わせていないということだ。
つまり、上条当麻はここで大人しく捕まるしか選択肢はない状況。
警備兵は上条たちのいる方向を向きながらずんずんと足を進めて近付いてくる。
その様子を見て上条はたじろぐ。絶体絶命な状況だ。
しかし、黒髪の少女の余裕めいた笑みは崩れなかった。
少女は歩き出した。前から接近してくる警備の男へ向けて。
上条はそれを見て思わず声を上げる。
上条「お、おい! 何やってんだお前!」
上条の制止する言葉を無視して少女は歩みを止めない。
少女と警備兵の距離が一〇メートル、九メートル、八メートルと次第に縮まっていく。
そして、最終的に二メートル、要するにお互い目の前と言える距離まで接近して、二人の足が止まる。
二人が見つめ合う。
少女は変わらず笑みを崩さない。警備兵の表情はヘルメットのせいでわからないが、目の前の少女を見ていることはたしかだ。
一体何が起こるんだ。上条は息を飲む。
静止した二人。最初に動いたのは警備の男だった。
男はひざまずいた。目の前に立つ黒髪少女へ向かって。
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