結標「私は結標淡希。記憶喪失です」
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681: ◆ZS3MUpa49nlt[saga]
2021/12/26(日) 00:35:06.22 ID:Ud1c3PHRo


電話の女『座標移動(ムーブポイント)捕獲任務の進捗はどうなってる?』

麦野「……残念ながら進捗なしよ」


 麦野はあえてそう言った。
 実際は滝壺にAIM拡散力場を記録させたため、いつでも追うことはできるというところまで進んでいる。
 だが、彼女は既にこの任務を降りるつもりでいるため、余計なことを喋らなかった。
 そう言われて電話の女は『ふふっ』と笑い、


電話の女『そうだよねー。まあでも、せっかくのチャンスを無様に逃して涙目敗走してるなんて、現状維持どころか後退しているって言っても文句言えないけどねー』

麦野「チッ、知ってんなら聞いてくるなよ」

電話の女『こっちからしたら、あんたら四人揃ってて何で失敗してんのよーって感じなんだけど。一体誰がしくじったのかなー? 絹旗? フレンダ? まさか滝壺? ……もしかしてあんたぁ?』

麦野「…………」


 言われて麦野は黙り込む。
 反論したい意思はあるが彼女の言っていることは全部事実だ。
 思いの丈をぶつけたところで、それは感情に流されたガキが喚くのと一緒になってしまう。


電話の女『滝壺は既にヤツのAIM拡散力場を記録してるんでしょ? だったら何で隠れ家でのんびり遊んでるのかなー?』


 要するに彼女が言いたいのは『滝壺を使って早く捕獲任務を再開しろ』。
 電話の女がこちらに連絡を寄越した理由。ただそれを伝えるためだけのことなのだろう。


麦野「滝壺は今ひどく消耗してる。このまま使い続けて完全に潰れたら、これからのアイテムの活動に支障が出るわ。そんなことをしてまで続行するのは割に合わねえだろうが」


 我ながら似合わないセリフを吐いたなと麦野は心の中で思った。
 しかし、そんなセリフを言ったところで無駄だと彼女は理解している。
 滝壺理后はたしかに優秀だ人材だ。けれど、上層部からしたらあくまで彼女は能力者を追跡できる道具としか見ていない。
 ということは、滝壺が使い物にならなくなったところで、すぐに代わりの道具を用意して補充してくるということ。
 使い捨ての消耗品としか彼女を見ていない。
 だから、次に電話の女が吐く言葉は『滝壺を潰してでも座標移動を捕獲しろ』。
 言葉の細かい差異はあろうが同じ意味のセリフを淡々と告げるだろう。
 だが、


電話の女『うーん、たしかにそれは一理あるわねー』

麦野「……は?」


 電話の女は同意した。麦野の甘ったれた言い訳に。
 予想外のことに麦野は目を丸くさせた。


電話の女『もともとあんたらの業務は『不穏分子の抹消』。だからこんな毛色の違う仕事持ってこられても私たち困っちゃうー! ってことよねー』

麦野「あぁ? そうは言ってねえだろうが! 勝手なこと抜かしてんじゃねえぞ!」

電話の女『素直に認めちゃいなよー? 私たちには到底無理な仕事でした、許してくださいってね?』

麦野「誰がッ……」


 歯噛みしている麦野の姿を勝手に想像しているのか、電話の向こうにいる女はしばらく馬鹿笑いした。
 ひとしきり笑ったあと、女はいつもどおりの口調で、


電話の女『ま、そういうことで今回の仕事はキャンセルってことで。代わりに別の仕事用意してあげといたからー』

麦野「別の仕事だと?」

電話の女『そ。あんたらお得意のくそったれ共を皆殺しにする簡単なお仕事でーす』


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