結標「私は結標淡希。記憶喪失です」
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679: ◆ZS3MUpa49nlt[saga]
2021/12/26(日) 00:28:22.65 ID:Ud1c3PHRo


 履歴は五〇件以上。一覧を見る限り御坂美琴と初春飾利と知らない番号。
 面子的におそらく知らない番号の持ち主は白井黒子のことだろう。大体の割合は美琴五割・黒子三割・初春二割。
 なぜだかマナーモードになっていた携帯電話のせいで今まで気付かなかった。
 その画面を横から見た少女が手を口に当てながら、


A子「あらぁ、もしかして彼女さん? いや、番号が三通りあるってことは……三股ゲス野郎?」

上条「ち、違げえよ! ただの友達と結標捜しを一緒に手伝ってくれてるジャッジメントの二人だ! たぶん、俺が勝手に突っ走って音沙汰なしだったから電話してきてたんだ!」


 「まあ御坂はなんで電話掛けてきてんのか検討もつかねえけど」と上条は付け加えた。
 さてどうしたのものかと上条は考え込む。
 今の時間は午後九時になりそうな時間帯だ。彼女たちが既に眠りについているとは思わないが、こんな時間に電話をするのはなんか気が引ける。
 携帯電話のディスプレイを凝視しながら難しい顔をしている上条を見て少女は、


A子「――えいっ☆」


 パシッ。上条当麻の携帯電話を取り上げた。
 突然の行動に上条は立ち上がり少女を睨みつける。


上条「なっ、なにしやがるっ!?」


 ドンッ!

 上条の体に衝撃が走った。少女に体を押されたのだ。
 不意のことだったのでバランスを崩し、上条は背中からベッドへ倒れ込んだ。


A子「アナタの考えていることは手に取るようにわかるわぁ。だからこそ、この携帯電話を渡すわけにはいかないってコト」

上条「なにわけのわからねえこと言ってんだ! かえ――」 


 上条が起き上がる前に少女が覆いかぶさるように馬乗りになった。
 何が起こっているのかわからず、上条の頭の中が真っ白になる。
 そんな上条を少女は星型の瞳で上からじっと見つめながら、


A子「下手に誰かと連絡を取られてこの場所を特定されても困るのよねぇ。だから、折返しの電話をするなら全部終わってからにしてくれるかしらぁ?」

上条「え、え、え、えーと」

A子「そういうわけで、今から上条さんはお休みの時間でーす! 時間になったら起こしてあげるからゆっくり寝ちゃっていいわよぉ?」

上条「は、はあ!? まだ九時だろ、そんな早くから寝られるわけねえだろ!」

A子「大丈夫よぉ、だって――」


 彼女が何かを言い終える前に上条の頭の中で何かの音が鳴った。
 ピッ、という電子音のようなものが。


上条(……えっ、な、なんか急に眠気が……)


 上条の意識が朦朧としている中、部屋の入口の方から声が聞こえてきた。
 さっきまで喋っていた少女とは全く違った声色だが、全く同じような喋り方の声が。


??「私の催眠力を使えばぁ、例えば虫歯で歯が痛くてまったく寝られないような人でもぉ、リラクゼーションサロンで心身を癒やされたときみたいな、快適な睡眠をお届けすることができるんだゾ☆」


 上条当麻は薄れゆく意識のまま声のした方向へ目を向ける。
 そこには蜂蜜色をした長い髪の毛の少女が立っていた。テレビのリモコンのようなものをこちらへ向けて。
 ただそれだけを認識して上条は、力尽きたように沈んでいった。


―――
――






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