結標「私は結標淡希。記憶喪失です」
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658: ◆ZS3MUpa49nlt[saga]
2021/12/25(土) 23:36:26.50 ID:jaU2C2/Fo


 『第三次製造計画(サードシーズン)』。聞いたことのない単語だった。
 一方通行の知っている『量産型能力者計画(レディオノイズ)』とはまったく別物なのだろう。
 自分の知らないところで新たな個体が生み出されていたという事実を知り、一方通行は動揺を隠せなかった。


番外個体「クロにゃんが無様に敗北しちゃったから、お次はミサカの出番ってことなんだけどさぁー」

一方通行「ッ」

番外個体「ええと、なんだっけ? 一万人以上殺しちゃったけどもうこれ以上は絶対に殺さないんだっけ? 『最終信号(ラストオーダー)』を、他の『妹達(シスターズ)』を守るんだっけ?」


 ニヤニヤとした表情で番外個体は続ける。


番外個体「だったらさー、ミサカのことも守ってほしいなー? ミサカが生まれた理由は『一方通行(アクセラレータ)の殺害』。あなたを殺さないとミサカは処分されちゃうってことなわけよ」


 一方通行は番外個体の言葉を聞いて理解した。
 学園都市最強の超能力者(レベル5)を倒すためにはどうすればいいか。
 その問いの最適解を目の前に叩きつけられたような気がした。


番外個体「ミサカはね、ミサカネットワークから負の感情を拾い上げやすいように調整されている個体なんだー」

番外個体「その負の感情っていうのもちろん、実験で一〇〇三一回もなぶり殺してくれたあなたに対する恨み、憎しみ、復讐心」

番外個体「感情が表に出にくい他の妹達の代わりに、こうやってそういう負の感情を拾い集めて表現してあげているってこと」


 そういうわけだから、と番外個体はポケットから何かを取り出す。
 ジャラリと、彼女の手の中には十本近い数の鉄釘が収まっていた。


番外個体「殺された一〇〇三一人の妹達のために死んでよ第一位ッ!! 残りの九九六九人の妹達とミサカのためにもねぇッ!!」


 番外個体は叫びながら手の中の鉄釘を一本取り出し、それを一方通行へ向けて構えた。
 おそらく超電磁砲(レールガン)のように鉄釘を射出しようとしているのだろう。
 体中に白い火花が走る。
 番外個体のチカラが今、放たれようとしていた。
 だが一方通行は、


一方通行「……たしかに、そうだな」


 肯定した。番外個体の言葉に対して。
 全身から力が抜かれる。戦意が消える。
 番外個体からしたら予想外の発言だったのか、射出されそうだった鉄釘は止まり、眉をしかめさせた。


番外個体「へー。エラくあっさり認めちゃうんだ? もうちょっと抵抗してくると思ったんだけどさー」

一方通行「オマエの言っていることは何一つ間違ってねェよ。俺は確かに一万人以上ぶっ殺した。それに対して罪を咎められるのは当然だし、アイツらに死ねと言われたら死んでやるべきだと俺も思う」


 けど、と一方通行は付け加える。


一方通行「俺にはまだ守らねェといけねェヤツがいる。守らねェといけねェ『約束』がある。そのためにも俺は――」


 一方通行の頭の中には結標淡希の姿があった。
 自分が初めて明確に好意を抱いた女。
 こんなクソッタレな男に好意を抱いてくれた女。
 彼女は今、学園都市の闇という底なし沼に引きずり込まれてもがいている。
 だからこそ、一方通行は、


一方通行「――アイツを救い出すまで死ぬわけにはいかねェンだよ!」





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