642: ◆ZS3MUpa49nlt[saga]
2021/12/18(土) 23:16:06.96 ID:loyT3wilo
一方通行は再び携帯端末を手に取り、今日のニュースのページを表示する。
それを見て一方通行は目を見開かせた。
『第一〇学区にある櫻井通信機器開発所に原因不明の火災が発生』。
『櫻井通信機器開発所』。
その名前に一方通行は覚えがあった。
結標淡希が過去にテレポートの関係で実験で赴いた施設の中の一つ。
現在、結標と思われる襲撃者がターゲットにしていると予想できる施設の一つ。
だが、今までの襲撃のニュースとは決定的に違う部分が一つあった。
それは襲撃されたというニュースではなく火災が起こったというニュースだという点。
今までの襲撃犯は人を傷つけ情報を盗むことはしていたが、建物を燃やすなんていうことはしていない。
たまたま手違いで火が点いて施設が燃え上がったと考えればそれまでなのだが、一方通行はもう一つの可能性の方が脳裏によぎってしょうがなかった。
一方通行(ついに、どっかの暗部組織と結標が接触したっつゥことか……?)
結標が空間移動能力者の関係の研究施設を狙っていることを暗部組織が予測し、それを的中させて結標と接触したという可能性。
暗部の人間なら自分たちがいたという証拠隠滅に放火を行ってもおかしくはない。
そして一方通行は、その可能性と連動して最悪なケースを頭に浮かべてしまう。
結標淡希が抵抗虚しく暗部組織に捕まってしまうという、最悪なケースが。
一方通行「あっ、ああ、あァ、アア、あああ、ァァ、あ、アッ」
言語にもなっていない声を吐く。
携帯端末ごと手をガタガタと震わさせる。
足から力が消えて膝から崩れ落ちる。
目頭が引き裂けるくらい目を大きく見開かせる。
心臓の音が今までで一番大きく聞こえる。
パニック状態に陥った一方通行は気付いたら、ある人物へと電話を掛けていた。
それは一方通行が頼るべきではないと考えていた人物。
切羽詰まった少年にそれを判断できる思考能力は残されていなかった。
端末のスピーカーから呼び出し音がなる。
一コール目。二コール目。三コール目。
四回目のコール音に差し掛かったところで電話が繋がった。
雑踏の音や電子音のようなものが混じった背景音の中から、その人物の第一声が聞こえてきた。
???『もしもしー? アクセラちゃんが電話してくるなんて珍しいにゃー、どうかしたのか?』
聞こえてきたのは軽い感じの男の声。
それは一方通行にとってよく知る者の声だった。
一方通行「土御門ォ!!」
受話器の向こう側にいる男は土御門元春。
一方通行のクラスメイトであり、暗部組織『グループ』のリーダーでもある男。
土御門は一方通行の荒げた声を聞き、
土御門『いつっ、ほんとどうした? いきなりそんな大声出して。鼓膜が破れるかと思ったぜよ』
土御門の言葉を無視して一方通行は吠える。
一方通行「オマエ今の結標のこと知ってンだろッ!? 結標が今どォなってンのか知ってンだろッ!? 結標が今どこにいるのか知ってンだろッ!? 結標がこれからどォなるのか知ってンだろォッ!?」
一方通行は思いつく限りの質問を吐き出す。抑えきれない思いが溢れ出していくように。
一方通行「教えろ土御門ォ!! オマエの知っていることォ、洗いざらい全部ゥ!!」
土御門『…………』
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