結標「私は結標淡希。記憶喪失です」
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641: ◆ZS3MUpa49nlt[saga]
2021/12/18(土) 23:13:03.66 ID:loyT3wilo


 すっかり日が暮れて夜に包まれた学園都市の街中。
 車の通りもなく静かな道沿いの歩道をゆっくりと、杖を突きながら歩く少年が一人。
 一方通行。
 その顔から生気が消え、地面を踏みしめる一歩一歩に彼の意思はなく、ただ流されるように前に進んでいる人形のようだった。

 少年の頭に何か冷たいものがポツリと一滴落ちた。
 その一滴は次第に数を増やしていき、やがてそれは数多の水滴となる。

 学園都市にパラパラと雨が降ってきた。
 傘を差さないとずぶ濡れになりそうな強さの雨が。


一方通行「…………あ」


 頭上から落ちてくる雨に当たり、一方通行の目は目覚めるように生気を取り戻した。
 同時に停止していた一方通行の思考が回り始める。


一方通行「……ここはどこだ?」


 道路を見渡す。『第七学区』の中にある道路だと表す看板が立っていた。


一方通行「……今何時だ?」


 ポケットの中から携帯端末を取り出しディスプレイを見る。
 『18:24』と表示されていた。


一方通行「……俺は一体、何をやっていたンだ?」


 一方通行は記憶を必死に手繰り寄せる。
 たしか午後四時を過ぎたくらいに廃棄された研究所をカモフラージュした、敵勢力の住処である地下施設に侵入したはずだ。
 そこでテレポートを使う駆動鎧と交戦し、苦戦しながらもソイツらを退けた。
 そのあとは……。


一方通行「あン?」


 ふと、一方通行は携帯端末が入っていたポケットに他の物が入っていることに気付く。
 何かと思いそれを掴み、取り出した。
 それは家電量販店とかに売っているどこにでもありそうなメモリースティックだった。


一方通行「…………がっ」


 『空間移動中継装置(テレポーテーション)計画』。


 その単語と、それに付随する情報が土石流のように一方通行の頭の中に流れ込んでくる。
 あのときの、モニター室での記憶が全て蘇る。



一方通行「がァああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」



 一方通行は咆哮する。
 手に持ったメモリースティックをアスファルトの上に叩きつけ、それを靴裏で踏み付ける。何度も、何度も、何度も。


一方通行「……はァ、はァ、はァ、はァ」


 息を整えながら一方通行はぐちゃぐちゃになった思考を落ち着かせる。
 こんなちっぽけな物を破壊しても何も解決しない。
 本能のまま怒りに任せたところで何も変わらない。
 現実から目を背けたからといって彼女は帰ってこない。


一方通行「……そォだ。結標を、アイツを早く見つけねェと」





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