結標「私は結標淡希。記憶喪失です」
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633: ◆ZS3MUpa49nlt[saga]
2021/12/18(土) 22:59:05.62 ID:loyT3wilo


黒子(実銃ッ!? 不味い――)


 黒子はとっさに空間移動(テレポート)のチカラを使い、先ほどいた物陰に移動する。
 ダガン!! ダガン!! という何発もの銃声が聞こえてきたことで、黒子は顔から血の気が引くような感覚が走った。


黒子(躊躇なくこちらへ発砲してきたところからして、やはりただのスキルアウトとかとは違うようですわね)


 スキルアウトの中にはああいった装備品を、どこからともなく仕入れて使っている過激派集団もいる。
 だが、所詮はチンピラの集まり。実際に使用する時が来ると怖くて撃てなかったり、うまく使いこなせなかったりする。
 それが黒子の中での認識だった。


黒子(相手は六人。位置取りや動きさえ間違えなければ負けはしないはず)


 この状況の打開策を打ち出すため頭を回転させる黒子。
 手持ちの武器や周辺の壁になりそうな障害物を確認する。
 そんな中、

 ブオオオオン!!

 という耳障りな大音が黒子の耳に飛び込んだきた。


黒子(これは車のエンジン音?)


 物陰から音のする方向を確認しようとする。

 彼女の横を一台の車が猛スピードで通り過ぎていった。
 茶髪のツインテールが風で大きくなびく。
 
 先ほど男たちと一緒にいた黒塗りのワンボックスカーだ。
 後ろにあったフェンスを突き破り、夜の街へと飛び出していった。


黒子「しまったッ!! 逃げられたッ!?」


 黒子が車の後を追うために物陰を飛び出す。

 パァン!!

 その瞬間、黒子の頬を掠るように何かが通り抜けた。
 頬から熱と痛みを感じ、たらりと生温い液体が流れる。
 何が起こったかを黒子は即座に理解して、再び物陰に飛び込んだ。

 銃を持った六人の男は逃げてはいなかった。

 黒子は思い出す。そういえば車の中にも何人か人が乗っていた。
 この状況から、車で逃走した者たちが暗部組織の幹部で、ここに残っている男たちは下っ端の兵隊なのだと黒子は断定する。


黒子(なるほど。上の者を逃がすために、この場に残ってわたくしを足止めするということですのね。大した忠誠心ですの)


 黒子は物陰で思考する。これからどうするべきかを。
 逃げていった車は結標淡希を狙った組織の幹部が乗っていると考えられる。
 最悪なケースを想定するなら、あの中には捕まった結標も一緒に乗っているかもしれない。
 あの車をここで逃してしまうということは、結標が自分たちには一生手の届かない場所に行ってしまうということに等しい。

 黒子にはもう一つ気がかりなことがあった。
 それはここで待ち合わせしていたはずの上条当麻の存在だ。
 彼が黒子を待ちきれずに建物内に侵入したとすれば、例の組織の連中と接触した可能性が高いだろう。
 黒子が知っている限り、あの少年は銃火器を持った人間とまともに戦えるような武器やスキルなど持ってはいない。
 だから、彼は今頃あの建物の中で最悪死体として、運が良ければ大きな怪我を負う程度で済んでいる可能性がある。
 その上条を助けに行こうとするなら、今現在自分を殺そうとしている六人の男を相手にしないといけない。





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