結標「私は結標淡希。記憶喪失です」
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606: ◆ZS3MUpa49nlt[saga]
2021/12/18(土) 21:59:25.61 ID:loyT3wilo


 上条当麻は結標淡希を探して研究施設が比較的に多い第一〇学区をさまよっていた。
 第一〇学区は研究施設が多いと同時に学園都市で一番治安の悪い学区でもあったため、スキルアウトに絡まれては逃げて、スキルアウトに絡まれては逃げてを繰り返していた。
 そんな中、上条はある場所へとたどり着く。


上条「……うわぁ、なんだこりゃ?」


 目の前にあったのは巨大な穴。
 学校の校庭くらいの広さがあり、深さは五〇メートル前後あるか。
 周りには進入を禁止するようにバリケードが張ってあり、その前でアンチスキルが見張りをしていた。
 穴の中を覗き込んでみると、巻き込まれた人の救助でもしているのか、駆動鎧が瓦礫の撤去作業をしているのが確認できる。
 危険な現場でうろちょろしている上条を見て、見張りをしていたアンチスキルが近付いてきた。


黄泉川「――ちょっとそこの少年! ここは危険だから近づかないほうが……ってありゃ? お前上条じゃんか」

上条「黄泉川先生?」


 話しかけてきたアンチスキルは、上条の通う高校で教師をしている黄泉川愛穂だった。


上条「これなんかあったんすか? こんなでっかい穴が空くなんて不発弾でも地面に埋まってたのか?」

黄泉川「あー、まあ爆弾じゃないけどとんでもないものが地面に埋まっていた、っていうのは間違いないかな?」

上条「とんでもないもの?」


 首をかしげる上条を見て、黄泉川は穴の方へ目を向ける。


黄泉川「ここはもともと廃棄された研究施設があったじゃん。けど、そこの地下にはまだ稼働している巨大な施設があったみたいで、それがなにかの衝撃で天井から崩れてって感じじゃんよ」

上条「へー、そりゃ大事故だなぁ。下手すりゃ死人とか出てそうだな……」

黄泉川「それなら安心するじゃん。ここの職員と思われるヤツらはみんな変わったデザインの駆動鎧を着てたみたいでな。多少は怪我しているが全員無事生還しているじゃん」

上条「そっか」


 こんな大規模な事故でも生き残れるなんてやっぱ学園都市の技術はすげえな、と上条は感心した。
 すると黄泉川は言い忘れていたことを思い出したような顔をして、


黄泉川「あっ、そうだ。実際は全員じゃ――」


 となにかを言いかけて口が止まる。


黄泉川「…………」

上条「?」


 黄泉川は険しい表情を浮かべたまま黙り込んだ。
 しばらくして、表情をいつもの軽い感じに戻して再び口を開いた。


黄泉川「いや、何でもない。忘れてくれ」

上条「はあ」

黄泉川「ところで上条はこんなところで何やってるじゃん? この辺りにお前の好きそうなものなんてないと思うけど?」

上条「うっ、え、えっと……」


 上条は突然の質問に体をビクつかせた。
 彼がここに居る理由は結標淡希を捜すためだ。
 だが、上条はそれを目の前にいる女性に話していいものか悩んでいた。
 結標と同居人である彼女は今の結標のことについてどこまで知っているのか。そもそも、彼女に話をしていいのか悪いのか。


上条「あー、その、なんと言いますか」


 そんなことばかり考えてしまっているため、気の利いた言い訳が全然出てこなかった。
 その様子を見た黄泉川は、不審感のようなものを抱いてしまったようで眉をひそめる。





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