結標「私は結標淡希。記憶喪失です」
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595: ◆ZS3MUpa49nlt[saga]
2021/12/11(土) 23:58:19.08 ID:EQdefISBo


一方通行(……そォいえばアレは)


 今まで気付かなかったが、一方通行はモニター室の隅に横開きの自動ドアのようなものを見つけた。
 暗がりだったのと、物があちこちに散乱している状況だったから視界に入らなかったのだろう、と適当に一方通行は理由付けした。
 一方通行は吸い込まれるように自動ドアの前に立つ。すると、まるで中へ誘い込むようにドアは左右へ開いた。


一方通行「…………」


 一方通行は息を整えて、暗がりの部屋へと入っていった。

 部屋の中はお世辞にも綺麗な部屋とは言えなかった。
 地面には配線だらけでごった返していて、空やゴミが詰め込んでいるダンボールがあちこちへ転がっている。
 部屋の奥へと進んでいくと、暗闇から明かりのようなものが浮かび上がってきた。
 一方通行はさらに奥へ行く。光の発生源へとたどり着いた。
 そこには複数台の大型コンピューターのようなものが床を埋め尽くしており、その隙間に人一人は入れそうなカプセルのようなものが置いてあった。


一方通行「…………ッ!?」


 カプセルの中を見て、一方通行は絶句する。
 中は培養液のようなもので満たされていて、あるものがその中を浮かんでいた。
 それは人間の脳髄と脊髄。
 至るところに電極が取り付けられていて、まるで機械の部品かのように扱っていた。


一方通行「……コイツが、『試作空間移動中継装置(テレポーテーション・プロトタイプ)』ってヤツの本体ってことか」


 見るだけで吐き気を催すような装置を見て、一方通行は先ほど読んだレポートに書いてあった文章を思い出していた。

 この装置の素体に使われたのは、少年院に収容されていた強能力者(レベル4)の空間移動能力者(テレポーター)だった。
 収容された理由は、半年もすれば出てこれるような罪。しかし、その者からすればそれは長すぎたらしい。
 毎年年度末に行われるAIMジャマーの一斉メンテナンス、そのときに脱獄しようと試みる。そして再度捕まり、さらに奥深くへと収容された。そういう人物だ。

 当初、人体五体満足のまま培養液で満たしたカプセルで生命維持しつつ装置にする予定だった。後々、この素体に人間的な価値を見出したときに再利用するためだ。
 しかし、素体本人が反旗を翻したことにより当研究所に甚大な被害が起きてしまった為、素体を殺害して必要な部品のみを取り出し使用した。
 この経験を活かし、『空間移動中継装置(テレポーテーション)』で座標移動(ムーブポイント)を素体にする際も、同様に殺害して必要な部品だけ回収して使用することとする。


一方通行「――――」


 一方通行の中で渦巻いてた怒りが消え去った。
 その代わりに何かが音を立てて崩れ去っていくのを感じた。
 支えるものが無くなった理性が侵略するように全ての感情を塗り潰す。
 そして、彼の中で何かが生まれた。




 この日、第一〇学区の一角で深さ五〇メートルを超える地盤沈下が起こり、施設が崩れ去るというが大事故が発生した。




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