586: ◆ZS3MUpa49nlt[saga]
2021/12/11(土) 23:41:23.57 ID:EQdefISBo
初春「何と言いますか、上条さんのことを見ていると、その、私にでも何かできることがあるんじゃないか、って思いまして」
黒子「……貴女、もしかしてあの腐れ類人猿のことが……!?」
初春「い、いえそういう意味じゃないです!」
両手を手の前でバタバタさせながら初春は精一杯否定する。
すぐそこにいる誰かさんに聞かれて変な誤解をされても困るからだ。
初春「私たちは強盗犯の結標さんしか知りません。まあ、私に限っては会ったことすらないんですけどね」
黒子「そうでしたわね。あの事件はあのあとすぐアンチスキルに引き継がれましたから、貴女には出会える機会などありませんでしたわね」
黒子のいう事件というのは『残骸(レムナント)』に関わった事件のことだ。
あのとき初春は後方で黒子のバックアップをしていたので、直接現場に赴くことはなかった。
初春「けれど、上条さんや一方通行さんは私たちの知らない結標さんをたくさん知っています。そんな彼らが一生懸命結標さんを追いかけているということは、それだけ大切な存在だったということです」
黒子「しかし、その大切だった彼女はもう既に……」
彼らが接してきた少女は記憶喪失をしていたときの結標淡希だ。
しかし、今彼らが追っている少女は記憶を失う以前の結標淡希。
悪い言い方をすればまったくの別人ということになる。
その意味を理解した上で初春は、
初春「それはあの人たちが一番わかっていることです。なのに、彼らは追いかけることをやめていません」
初春「きっと彼らは信じているんじゃないでしょうか。例え記憶がなくったって、またわかり合うことが出来るんじゃないかって」
勝手に私が思っているだけなんですけどね、と照れくさそうに初春は笑って誤魔化す。
しかし、彼女が冗談で言っていることではないことは目を見ればわかる。
初春「そう考えたら、なんか私も手伝いたいなって思ってしまいまして、なんて」
黒子「……はあ、何と言いますか、甘いですわね。お花畑なのは頭の上だけかと思ったら中までそうだったのですの?」
初春「なんのことですか?」
真顔で首を傾げる初春を見て黒子はたじろいだ。
なんでもないですわ、と黒子が有耶無耶にして目を逸らす。
そんな黒子の様子を見てまた首を傾げながらも、初春は話を続ける。
初春「それに、一度会って話してみたいと思いまして」
黒子「話してみたい? 誰とですの?」
初春「もちろん決まっているじゃないですか。あの人たちがあんなに大事に思っている結標淡希さんっていう人とですよ」
黒子はのん気そうな笑顔で変なことを言う友人を見て再びため息を付いた。
片手で軽く頭を抱えながら黒子は口を開く。
黒子「……ふん、あまり変な期待をしないほうがよろしいかと。ただのいけ好かない女ですの」
初春「ええぇー?」
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