結標「私は結標淡希。記憶喪失です」
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576: ◆ZS3MUpa49nlt[saga]
2021/12/11(土) 23:16:56.29 ID:EQdefISBo


 第一〇学区にある閉鎖された研究施設。
 有刺鉄線に巻かれ錆びついた鉄柵に囲まれており、敷地内は整備されていないのか雑草がところどころ生い茂っている。
 正門には『関係者以外立ち入り禁止』の看板がでかでかと番線で括り付けてあった。
 その看板の前で、一方通行は腰を落としながら首に付いている電極をいじっていた。


一方通行「――よし、予備のバッテリーに交換完了だ。とりあえず用が終わったらメインの方を充電しねェとなァ」


 一方通行の電極には今サブのバッテリーが取り付けられている。
 能力使用モードの持続時間は一五分間とメインの半分だが、彼にとっては有用な戦力だということには変わりない。
 バッテリーの交換が終わった一方通行は立ち上がり、敷地内を眺めながら柵の外を歩いて回る。


一方通行(ここがヤツらの住処だということは間違いないだろォ。ヤツの状態からして嘘は付いていなかったはずだ)


 ここの情報は先程接触した研究員から得たものだ。
 口で脅しても吐かなかったから、軽く拷問じみたことをしただけですぐに吐いた安い情報。
 その真偽は一方通行が能力による生体電流の読み取りと、嘘にまみれた世界で磨き上げた洞察力によって正しいものだと判断した。
 もしこれが嘘だとしたら、あの研究員はハリウッド俳優も霞むほどの名演技をしたということだろう。
 そんなことを考えていた一方通行だが、あるものを見てこの考えが杞憂だったことにすぐに気付いた。


一方通行(この監視カメラ、一見劣化して機能停止したスクラップ品に見えるが、動いてやがンな)


 金属部分は錆びついており、起動しているということを表すランプも消えている。
 電気を通すためのケーブルは断線しており、誰がどう見ても壊れた監視カメラだった。
 しかし、一方通行はそれらの情報などまったく気にしていない。見ているのはレンズの奥。
 機械の内側で目の前の景色を映し出そうとする部品の動きを。


一方通行(さて、住処の入り口はどこだァ? 普通に考えりゃあそこにある施設の建物だろォが)


 壁は土で汚れ、窓は割れ、中は埃でまみれている。
 扉の蝶番の部分は遠目で見ても錆びついているし、付近は草で生い茂っていた。
 どう見ても人の入ったような形跡は見られない。


一方通行(……となると)


 一方通行は敷地内にある研究施設にしては広い庭地に目を向ける。
 背の低い草が点々と生えている以外はこれといった特徴はない、普通の人間ならそう判断するだろう。
 しかし、一方通行の眼はそれを見逃しはしなかった。


一方通行(あそこだけ一センチくらい地面が浮いてやがンな。しかも不自然なことに直線にな)


 一方通行の目線の先にある地面は彼の言うように他の部分より一センチほど高かった。
 ただ高いだけなら地面が荒れることによってできた凹凸として判断できるが、その一センチの高台は一〇メートルほど直線に伸びていた。
 一方通行は電極のスイッチを入れ、鉄柵を伸び越えてその不自然な地面の前へと着地する。
 よく見てみるとその直線は別の直線と繋がっており、それらを全て繋げると一〇メートル四方の正方形が出来上がった。


一方通行「……ここだな」


 そうつぶやき、一方通行はその一センチの台を蹴る。
 すると、その四角形は金属が無理やり折り曲げられたような鈍い音を上げ、地面と垂直になるように跳ね上がった。まるで蓋が開くように。
 四角形のあった場所には地面の中へと続く坂道が地下へと伸びていた。
 そこの風景は、地上にあるまったく整備の行き届いていない廃墟と違う、明らかに作りの新しい研究所を思わせるようなものだった。





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