結標「私は結標淡希。記憶喪失です」
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517: ◆ZS3MUpa49nlt[saga]
2021/11/28(日) 00:11:22.01 ID:MJMUKdI8o


一方通行「悪りィ、起こしちまったか」

打ち止め「ううん、いいよ。おかえりなさい。随分と遅くまで遊んでいたんだね、ってミサカはミサカは時計を見ながら言ってみる」


 時計の針は深夜の十二時をゆうに過ぎていた。
 ふわぁ、とあくびをしながら打ち止めは続ける。


打ち止め「ところでアワキお姉ちゃんはいないの? お風呂? ってミサカはミサカは一人のあなたに対して尋ねてみたり」

一方通行「……ちょうどイイ。オマエには直接面と向かって喋っておきたかった」


 そう言うと一方通行は、先程食卓の上に置いたメモ用紙を握りつぶしてズボンのポケットに押し込んだ。
 その様子を見て打ち止めはきょとんとした表情で首を傾げる。


一方通行「打ち止め。もう結標はこの家には戻ってこねェ」

打ち止め「……どういうこと?」

一方通行「そのままの意味だ。アイツはもォこの家には戻ってくることはねェって言ってンだ」

打ち止め「だからどういうこと? あなたの言っていることがわからないよ? どうしてアワキお姉ちゃんが帰ってこないの? ってミサカはミサカは具体的な質問をしてみる」

一方通行「オマエの知っているアワキお姉ちゃんは、もォこの世にはいねェンだよ」

打ち止め「え……」

一方通行「アイツは記憶を取り戻して、九月一四日ンときの結標淡希に戻っちまったンだよ」


 打ち止めは目を大きく見開き、手に持っていた抱き枕が床に転がった。
 声を震わせながら少女は口を動かす。


打ち止め「そ、それじゃ、アワキお姉ちゃんはもう覚えていないの? ミサカたちと一緒に遊んだことも、ご飯を食べたことも、お風呂に入ったことも、笑ったことも」

打ち止め「ぜんぶ、ぜんぶ忘れちゃったってことなの? ってミサカはミサカは問いかけてみる」


 大きな瞳に涙をにじませながら、打ち止めは恐る恐る問いかける。
 その姿を見た一方通行は歯噛みしながら、


一方通行「……ああ」

打ち止め「う、嘘……だよね? み、ミサカをからかうための嘘、なんだよね……?」

一方通行「…………」

打ち止め「うっ……わっ、ああ、……」


 打ち止めは少年の表情から、これは紛れもない事実なんだと、察しのだろう。
 だから、それに気付いた打ち止めは膝から崩れ落ちた。
 目から大粒の涙がフローリングへとこぼれ落ちていく。


一方通行「すまねェ」


 一方通行はしゃがみ込み少女の頭を撫でながら謝った。
 いくら結標淡希の記憶の回復が意図的に行われたことだろう。しかし、それがなくてもいつかは記憶を取り戻して、同じ状況にはなっていたはずだ。
 結局、いつまでも問題を先延ばしにしていた自分のせいだ。自分が目の前にいる少女を傷付けた。





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