512: ◆ZS3MUpa49nlt[saga]
2021/11/27(土) 23:58:26.04 ID:G65aU121o
一方通行「そォだ。オマエはジャッジメントとして上からの指令に忠実に動いた。だが、そンなオマエでも何あったンじゃねェのか? 今回の任務の中で違和感が」
黒子「そんな……」
黒子は否定の言葉を言いながらもどこかでそれを考えていた。
ジャッジメント上層部からの支部へ直接通達されるという異例。
本来のジャッジメントとしての管轄ではない、強盗犯の確保という任務。
なぜか一七七支部だけに通達されているという状況。
たしかに、一方通行の言ったことを前提として考えれば、これらのことに対して納得がいく。
だが、黒子の中には一つだけ解せない点があった。
黒子「仮にこれが裏で暗躍している連中が仕組んだことだとするなら、わたくしは一体誰を追いかけてここにたどり着いたんですの!?」
ここにいる三人の発言を全て真実とするなら一つ矛盾点が発生していた。
それは事件発生時、一方通行と結標淡希が一緒にいたという事実と、その間に衛星カメラや監視カメラの映像を元に黒子たちジャッジメントが追跡劇を繰り広げていたという事実だ。
一方通行が嘘を言っているとは思わないが、かといって一七七支部でバックアップしてくれていた少女、初春飾利からの情報が間違っていたというのも信じがたいことだった。
一方通行「オマエが疑問に思っているのは、衛星カメラとか監視カメラの映像についてじゃねェのか?」
一方通行は見透かしたように黒子の浮かべている疑問を口に出した。
一方通行「ああいうのは、技術があるヤツが使えばダミーの映像へ差し替えることができンだろ? それに踊らされたっつゥのが一番ありえる話だろォな」
黒子「た、たしかにそういう技術は存在しますわ! けどそれをやられたとしてあの初春がそれに気付けないなどということが……!」
一方通行「その初春っつゥのがどれだけ電子戦に長けたヤツかは知らねェが、学園都市の闇は深けェ。それより上のハッカーがいるか、またはシステムが存在するか」
黒子「ぐっ……」
たしかに初春飾利は優秀なハッカーだ。彼女の力には黒子も何度も助けられている。
だが、実際黒子は彼女がどれだけすごい技術を持っているのかを知らない。黒子自身がその分野に関しては知識が足りていないからだ。
だから、一方通行の言ったことに即座に切って捨てることができなかった。
言葉を詰まらせる黒子をよそ目に一方通行は続ける。
一方通行「ま、そォいうわけだから結標が言っていたババァもその手先と考えたほうがイイな」
そう言いながら一方通行は、横に転がっている盗難品であるキャリーケースの目の間に立った。
そして首元に手を当て、電極のスイッチを入れる。
美琴「――ちょ、ちょっとアンタなにを!?」
制止しようとする美琴を無視しながら、一方通行はキャリーケースを軽く小突く感じにつま先を当てた。
ガンッ、という音とともにキャリーケースの施錠が破壊され、蓋が勢いよく開く。
その中を見て黒子が目を見開かせる。
黒子「な、中身がない……?」
黒子の言う通りキャリーケースの中身は空だった。
正確に言うなら中にある物を固定するベルトや、外部からの衝撃を吸収する防護材などがあるが、これらはこのキャリーケースに備え付けられた機能に過ぎない。
一方通行「そォいうことだ。オマエらを釣るための盗難品っつゥ役割を果たすだけなら中身はいらねェからな」
一方通行「それにアイツは九月一四日当時、同じよォなデザインのキャリーケースを持っていた。おそらくコイツにも記憶回復を助長させる意味があンだろォな」
中身のないキャリーケースを見つめながら、一方通行はつぶやく。
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