【ミリマスSS】みちこの動く城
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11: ◆ivbWs9E0to[saga]
2021/06/12(土) 17:12:28.50 ID:Rn+1RG8T0
 
 ただでさえ大規模な移動なんて初めてなのに、変形や特別演出など、誰も考え付かなかった挑戦的な取り組みだ。提案したロコも凄いが、どうしてもげき子の負担が重くなる。なのでこうして、げき子の身体を労いつつ、ゆっくりゆっくり行軍しているのであった。
 
「平場のスペースも無尽蔵じゃないからな。ここをこういう間取りにすれば……」
「でもそうすると東側の荷重が大きくなってしまいます。バランスが悪くなるとそれを支えるげき子ちゃんの負担が増えちゃうので、出来れば避けたほうが……」
以下略 AAS



12: ◆ivbWs9E0to[saga]
2021/06/12(土) 17:12:59.21 ID:Rn+1RG8T0
 
 今回の大移動に伴って皆の前に姿を現したげき子に対してもその気持ちは続いているようで、愛情表現が可能になったことが嬉しいと言わんばかりにスキンシップを取る杏奈なのであった。

 だから、ライブの終わりには皆さんが私のことを忘れてしまうのが少しだけ寂しい。とげき子は言った。その時プロデューサーは「忘れないさ」とキザっぽく答えたが、どうやらライブの後に残るのは「劇場がなんやかんやして移動した」程度の記憶らしい。プロデューサーは目の前に佇む可憐な少女とその腕に引っ付いている杏奈を見て、まさか忘れることは無いだろうと思っているが、どうやら避けられないことらしい。
 


13: ◆ivbWs9E0to[saga]
2021/06/12(土) 17:13:34.86 ID:Rn+1RG8T0
 
「おや、何やらプロブレムですか?」
「ロコちゃん。間取りを一部変更したいんだけど、なかなか納まりが悪くって」
「それならディテイルとパイプラインが分かるようなマップを持ってきますね。ウェイトプリーズです」
「あ、じゃあ私は飲み物でも持ってきますね。杏奈ちゃん、手伝ってくれる?」
以下略 AAS



14: ◆ivbWs9E0to[saga]
2021/06/12(土) 17:14:24.07 ID:Rn+1RG8T0
 
「なぁ。どうしてロコは、劇場を移動させるなんてアイデアが浮かんだんだろうな」
「……私は何もしてないよ?」
「そうだろうな。げき子が絡んでるなら、こんな提案させないはずだ」
「知った風な口を利くのね。私だって偶には我儘くらい言うわよ」
以下略 AAS



15: ◆ivbWs9E0to[saga]
2021/06/12(土) 17:15:06.64 ID:Rn+1RG8T0
 
「劇場のこと、アイドルのこと、仲間のこと、いろんな可能性を見つけて、いろんな可能性を表現してくれるの」
 ロコにとってアイドルとは刺激であり、手段であり、味方だった。そして劇場はそれら全てを与えてくれる大切な場所だった。用が無くても劇場に通い、わざわざ道具も揃っていない劇場で創作活動を始めてしまうのはそういった理由もあるのだろう。また、劇場で何か企画を行う時には自分が出演しなくても積極的に参加していたし、増築計画が出た時なんて専門業者の会議にも口出ししてきたくらいだ。
 39プロジェクトの発表からファンが増えていくにつれ、劇場はどんどん手狭になっていき、外での活動の機会も増えていった。そんな中でもアイドルたちは、劇場だからこそ出来ること、劇場だからこそやりたいことを考えて、行動してくれていた。それは哀れみではなく、皆がそうしたいと思ってのことだった。
 


16: ◆ivbWs9E0to[saga]
2021/06/12(土) 17:16:10.41 ID:Rn+1RG8T0
  
「……だから、ロコちゃんが『シアターをムービングすればいいんです!』って言ってくれた時、ちょっと嬉しくて、気が抜けちゃったのかも……って、結局わたしの我儘だったみたい」
「……あぁ、そういえばあの時、誰も劇場を移動させることに疑問を持たなかったもんな。あのタイミングでげき子が現れたのか」
「恥ずかしいからこの話はおしまい。今晩にでも忘れさせても良いんだけど、また聞かれたら嫌だからライブ終わりまでオマケしておくわ」
「いや、でもそうなると」
以下略 AAS



17: ◆ivbWs9E0to[saga]
2021/06/12(土) 17:18:51.74 ID:Rn+1RG8T0

 その後、夜もどっぷりと更けた頃。
 
「……星がよく見えるね」
「ゲキコ。明日もアーリーなんですから、しっかりレストしてください」
以下略 AAS



18: ◆ivbWs9E0to[saga]
2021/06/12(土) 17:19:31.37 ID:Rn+1RG8T0
 
「私もたまにはこっちで寝ようかな」
「ちゃんと休めないならノーグッドですよ?」
「大丈夫。お布団借りるね。ロコちゃん、一緒に寝よう?」
「仕方ないですね。なんだか今日のゲキコはベイビーみたいです」
以下略 AAS



19: ◆ivbWs9E0to[saga]
2021/06/12(土) 17:20:54.26 ID:Rn+1RG8T0
 
 朝四時ごろ、げき子は何かが動く気配を感じて目を覚ました。すぐ横の枕には既にロコの姿は無かった。
 眠たい目を擦りながら顔を上げると、白み始めた空が映る大窓の前でロコが筆を走らせていた。白い太陽を映す湖面と朝露に濡れる草原、遮るものが何もない大きく開けた空。そして湖のすぐ横に聳え立つ大きな城。

「あれ、これって……」
以下略 AAS



20: ◆ivbWs9E0to[saga]
2021/06/12(土) 17:21:35.88 ID:Rn+1RG8T0

 湖の横にある城にも時間ごとに色が足され、初めは想像もつかなかったような表情が見えてくる。写真だったらこうはならない。ロコの頭の中に広がる様々な劇場の色。

 約二時間半、ロコは一心不乱に描き続け、ようやく筆をおいた。
 あとは手直しすれば完成らしく、そろそろ出発しても大丈夫。ということをげき子に伝えながら、ロコは大きな欠伸を拵えた。
以下略 AAS



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