狐娘「妾は老いることも死ぬこともないケモノじゃ」
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71: ◆YBa9bwlj/c[saga]
2021/05/20(木) 01:17:34.94 ID:0sLGfUdN0
男「……人を、恨んでいますか」
狐娘「いや」
狐娘「奴らの所業を許すことはないが、恨みはせぬ。…そう、約束したからの」
男(約束…)
狐娘「死なぬと分かっているとな、どこまでも退屈な時間しか流れないものじゃ。妾の1年の価値は、主の1分にも劣る。こんなものを夢見る人間が数多おるのじゃから、無知というのは恐ろしいの」
男「……」
狐娘「もうよいじゃろう」
狐娘「妾にかまけるのはやめておけ。妾に群がる狂信者がいなくなったとも思えぬ。連中の餌食にされるやもな」
狐娘「妾はじきにここを離れる。あまり一所に留まるのも良くないからの」
狐娘「……お主に付き合ったのは、ほんの気まぐれじゃ」
男「………」
男(そっか)
男(この人の居場所なんてずっと無かったんだ)
男(ずっと追われて、逃げて、奪われて……僕たちの一生よりも遥かに長い時間その繰り返し…)
男(どれだけの孤独と不安の中過ごしてきたんだろう。きっと僕なんかじゃ分かってあげることは出来ない。でもそれは狐娘さんが人じゃないからじゃなくて、人同士でもお互いの気持ちなんて推し測ることしか出来ないのとおんなじ)
男「……だったら」
男「あの日僕にかけてくれたおまじないも、気まぐれですか」
狐娘「…そうじゃな」
男(じゃあなんでそんな顔してるんですか)
男(こんなとき姉さんならなんて言うのかな)
男(自分のこともいっぱいいっぱいの僕じゃこの人の支えになるなんて難しいだろうけど……せめて、僕がこの人の居場所を見つけてあげたい)
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